Mindo のオリート畑にある木立の中で見かけたコシアカミドリチュウハシ。人間に追われ続けているせいかとても警戒心の強い野鳥です。
最初にこの Toucanet をはっきりと見てシャッターを切ることが出来たのは、1997年の5月にはじめて、当時バード・ウォチングの推奨スポットとして世界のバーダーの間でその名前が知られるようになっていた Mindo に行ったときでした。活火山 Pichincha (ピチンチャ:海抜 4,675 メートル)の北西山麓に展開する原生林、二次林、果樹園、放牧場、滝、渓谷を包括した広い地域を Mindo と呼びます。その当時は、首都へ通じるハイウェイから数キロメートルも離れた小さな盆地の中にある、日本流に表現すると大きな隠れ里といった風情の谷間の村でしたが、今は、もう少し拓けて来て、ちょっとした山の町になっています。その地区に山と果樹園を持ち、ロッジを経営しているおじさんが自ら私達を野鳥探索と自生ラン鑑賞の3時間コースを案内してくれました。野鳥を見るのだったら、一泊してその日の暮れ方と、翌日8時間コースをゆっくり廻れば、まあ満足するぐらいの野鳥たちに巡り合えるでしょう、と言っていました。3時間コースを廻って来て昼食をとっていると、黒い 600mm か、それ以上の長い大きなレンズを担いだ二人のアメリカ人のカメラマンが戻ってきて、良いものが撮れたと言って喜んでいました。私はバナナ屋の常で、普段の調子で冗談を言ったりして二人のその日の成果を聞いていましたが、どうも彼らの受け答えがとても専門的なので、おやっ、もしかしてとんでもない人達と話をしているのではないかと焦りました。後で、親父さんからあの二人はもう一週間もそこのロッジに宿泊して、野鳥の撮影に明け暮れている、有名なアメリカ人のカメラマンだと教わり、その名前を聞いた時は、私も専門誌や自然写真雑誌でその美しい写真に感動した一人でしたので、背中を冷や汗が流れるような気分になったのを思い起こします。
同じくミンドの散策で、 canopy (樹冠部)から降りてきた Masked Tityra。この鳥はタイランチョウの仲間にしては、見晴らしの良い明るい所より薄暗い所を好むのか、とても撮るのに往生しました。今度会ったらまともな写真を撮ろうと思ったのですが、その後はこの鳥に出会えません。
この Toucanet は、アンデスの西側にいる唯一の緑色をしたチュウハシなので、 Mindo の住民で野鳥専門家でない人達は「 Tucan Verde ( Green Toucan )」と呼んでいます。私も図鑑 The Bird of Ecuador が手に入るまでは、 Green Toucan という野鳥がいるのかと思っていました。私と同年輩かそれ以上のエクァドール人のヴェテラン・バナネーロ(バナナ関係者)に訊くと、一昔前まではオリートの畑でも時々眼にすることがあったが、最近では殆ど見かけないと言っています。この写真は、その日ミンドのツアーを始めてすぐ、オリート畑の外れで木立の中に見つけて撮ったものです。「 Tucan Verde だ。良いものに出会ったね。」と、親父さんに喜んで貰ったのを昨日のように思い出します。その日は、二枚目の写真の Masked Tityra や、アンデス・イワドリ、ツバメトビ、鷹・隼、ハチドリ、キバシリ、フウキンチョウなど実に多くの野鳥を見ることが出来ました。しかし、それよりも仲間たちを驚かせたのが自生蘭の種類の豊富さでした。 Mindo の蘭は、前にも紹介しました La Pahuma の蘭とは同じ種でも少し違っています。多分、高度の違い、土壌、気候の違いがその差異を生んでいるのでしょう。ミンドのツアーの締めくくりは、突然飛んで来たモルフォ蝶に出会えた事でした。モルフォ蝶に会う一番良い時期は、エクァドールが乾季、低温で乾燥した季節、から雨季、高温で多湿な季節、に向かいはじめる 12 月の初めです。この時期に羽化するモルフォ蝶の数が一番多く、なおかつ、完全な羽を持っていると蝶好きの仲間が言っています。