バナナ園の野鳥と生き物 = バックナンバー =


No.95 Ocelot

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、番外編"Ocelot(オセロット:Leopardus pardalis) "です。

Ocelot(オセロット:Leopardus pardalis)

Miss Mocache に抱かれて、歯をむき出してイライラを顕わにしているティグリージョの子供。

今回は、エクアドールへ 40 年以上も出張している私もさすがに、「これをペットにしちゃあまずいでしょう。」と独りごとを言ったペット、いや野生動物をテーマにします。

この最初の写真は、 2002 年の 3 月、今までも度々話題にして来た Mocache (モカチェ)市の女性市長さんで、サニート・バナナ農園も経営している Sra. Andrade (アンドラーデさん)の農園を舞台にしたテレビ番組の撮影班が入ったときに撮ったものです。その日は、バナナ祭りがモカチェ市の市役所前で行われるというので、近在からも大勢の人達が小さな市庁舎前の広場に集まって来ました。近在からも、と書きましたが、モカチェ市の中心は、広いトウモロコシ畑が何万ヘクタール(町歩)にもわたって広がる丘陵地帯の真ん中を豊かな水をたたえて流れるケヴェド川の淵につくられているため、いわゆる市街地は狭く小さいので、そこに住む人達は数千人に過ぎず、大多数の市民は田園部に住んでいるからです。バナナ祭りの主役は女性市長さんと日本からやって来た若い俳優さんで、特設舞台の上ではエクァドール・ミュージック専門のバンドが、ヴォリュームをいっぱいに上げて流す自分達の音楽に酔いしれて、女性歌手を中心に盛り上がっていました。街を通り抜ける車を迂回させて特別に作った歩行者天国では、コンクリートの道路が祭りの参加者達のダンス・ステージになって、まさに初老のおじさん達から若いセニョリータ達までがラテン・アメリカ人特有のノリで踊りまくっていました。そんな所へ 10 歳前後の女の子の一団が背が高いセニョリータをとり囲むようにして広場にやって来ました。 Triguena 、黒人の血と白人の血が混じった女性で肌の色が濃い人をこう呼ぶのですが、彼女が子猫に良く似た動物を抱いているので、よく見ると、それは Tigrillo 、英語でオセロットと呼ばれる、猫科の野生動物の子供でした。私がはじめてエクアドールに出張した当時は未だ、バナナ園の中で人が来ると、慌てて逃げて行くのを目撃することもありましたが、その後に世界を訪れた毛皮ブームの中で、斑点のある猫科の皮は高値で取引されるようになり、あっという間に、その生息数を減らし、今日では Red-Data Book にも載るようになってしまいました。「 Oiga, es tigrillo ? ( もしもし、これはティグリージョでしょ。 ) と、チビちゃん達に聞いたのですが、「 Senor, es Miss-Mocache. ( セニョール、ミス・モカチェよ。 ) 」と、将来のお嬢さん達は、おねえさん株の Miss Mocache を普段から自慢しているのでしょう、誇らしげに返事をしてきました。おじさんはその抱いている子猫のような動物のことを聞いているので、セニョリータのことを聞いているんじゃないんだけどなあ、と思いましたが、口を噤みました。後で、町の人に聞いたら、あの子猫は、町外れの森の中で親が殺され、ミス・モカチェの家の人達に飼われているのだそうです。その家族以外にもティグリージョを飼っている人に会うこともあります。

Ocelot(オセロット:Leopardus pardalis)

首都キートの動物園で、多分、上を飛んでいた鳥を見上げていたティグリージョの成獣。

エクァドールの Red Data Book には二種のティグリージョが載っています。どちらの種も、アンデス山脈の海抜が高い所を除いて東のアマゾン地区にも、西の La Costa 地帯にも棲息しています。猫科の野生動物はもちろん、犬科の野生動物も、 La Costa で原生林や原野、湖沼地帯が減少するのに伴い、その生息数を著しく減らしています。それは、当然野鳥達にも言えることです。

ただ、エクァドール領のアマゾン地帯は、他の国のアマゾンと違って、自然破壊が大規模に方々で行われているという訳ではないので、今でも多様な生態系が維持されています。その様子は、今月の24日(日曜日)、31日、8月7日と 3回にわたって、日本テレビ系列全国ネットの番組「所さんの目がテン!」の中で、エクアドールへ入った撮影班が、バナナ、アンデスの高峰 Cotopaxi ( コトパクシ山 ) 、ハチドリ、アマゾンなどを放映する予定ですので、そこで見ていただきたいと思います。