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No.93 Orange-winged Amazon

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、" Orange-winged Amazon(Amazona Amazonica:キンソデボウシインコ) "です。

Orange-winged Amazon(Amazona Amazonica:キンソデボウシインコ)

2001年2月に撮影したIsidro。まだ、若々しいですよね。尾羽の色に注目してください。ポジで撮影(スキャン)。

無責任なようですが、この写真のインコが本当に「キンソデボウシインコ」なのか、或いはその変種、または亜種なのかは、素人の私には確信が持てません。その理由は、ガイド・ブック“The Birds of Ecuador”を開いてこのインコの名前を調べたのですが、そこに載っているオウム、インコの仲間46種の中で、写真のインコに似ているのは、キンソデボウシインコしかありません。しかし、よく比較してみると、オリートの産地「Mana」で撮ったこのインコの尾羽の色は、同図鑑に緑一色で描かれているイラストの物とは明らかに異なっているし、何よりも素人の私を悩ませるのは、棲息地域がアマゾン地区と解説されていることです。

このホーム・ページでもっと早い機会にこのインコを扱いたかったのですが、上記のような疑問があったので、名前も学名もはっきりせず困っていました。今回、久し振りにエクアドールの産地視察でMana地区に入ることになったので、この鳥が居ついてしまったオリートの有機栽培農園“Hda. Luisita(ルイシータ農園)”にも足を伸ばすことになり、農園主のおじいちゃんに会って、予てからの疑問をぶつけてきました。「何年か前に私が写真に撮ったLoro(インコ)の姿を見かけませんが、未だいるんですか。」「ああ、Isidroの事かい。そこら辺にいなかったかい。今呼んでみるよ。IsidroIsidro! あれっ、出て来ないなあ。まあ、孫に探させるよ。畑(オリート畑)でも見てなよ。」「あのインコはIsidroって名前なんですか。」「そうだよ。息子と同じ名前なんだ。」「それはそうと、あのインコは何処かで買って来たのですか。それとも、この辺の山に住んでいたのがおじいさんの所に居ついてしまったのですか。」「そうさなあ、十三年前にやって来て、ここが気に入ったらしく、居ついてしまったのさ。」「Isidroは群れでやって来たのですか。それとも、一羽で来たのですか。」「一羽で来たんだ。それから、この辺の果物や、わしらがあげる餌を食べたりして、居ついてしまったんだよ。」

Orange-winged Amazon(Amazona Amazonica:キンソデボウシインコ)

2005年6月22日お孫さんの支えるデッキ・ブラシの柄に乗ってやって来たIsidro。全体が白っぽくなっていますか?デジタルカメラ標準ズームで撮影(レタッチなし)

四十分程オリート畑の中に入り、オリートの生育状況やそこにやって来る野鳥、農園の中に咲いている花々を見たり、写真に撮ったりしてパッキング・ハウスに戻って来ました。「セニョール、ほら、Isidroを連れて来たよ。」と、お孫さんがデッキ・ブラシの柄にインコを止まらせて、私を待っていました。そこに居ついて十三年と聞いていたので心なしか、このインコも我々のようにジイサマの域に入りかかっているようで、奇妙な親近感を覚えました。

それにしても、何らかの理由でこの鳥がアマゾンから、低い所だけを選んで来たとしても、2500メートルはあるアンデス山脈の峠をいくつも越えてマナ地区まで来たのか、あるいは群れで移動中に仲間とはぐれてここに迷い込んだのか、はたまた、オウム、インコ類をペットとして買い求めるマニア目当ての密猟者に捕まって、Banos辺りの谷間の道路を運ばれていた途中に逃げ出してマナ地区に迷い込んだのか、その本当のところはIsidroにしか分かりません。それとも、棲息していないと思われているアンデス山脈西麓の原生林にはIsidroの仲間がまだいるのか。この最後の推察はエクアドール人、中でも、La Costaの出身者に支持者が多いのも面白い事です。この点に関しては、上記の図鑑をお持ちの方はもう気が付かれていると思いますが、その中のイラストの脇に“E”あるいは“W”と記されているものが、キツツキ、カッコウ、ハチドリ、タイランチョウウ、フウキンチョウ、シトド類などで見られます。つまり、E とはアンデスの東、同東山麓そしてアマゾン地区を指し、Wとはアンデスの西、同西山麓そしてLa Costa地区を意味し、東に棲息しているものと西に棲息するものとの差異を表示しています。ということは、もしかすると、Isidroは「キンソデボウシインコのWestタイプ」などと言うこともあるかもしれないのです。これ、素人のたわごとです。