バナナ園の野鳥と生き物 = バックナンバー =


No.92 Southern Beardless Tyrannulet

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、" Southern Beardless Tyrannulet(キバラメグロハエトリ:Camptostoma obsoletum) "です。

Southern Beardless Tyrannulet(キバラメグロハエトリ:Camptostoma obsoletum)

バナナ園の木立の中に入ってこっちを見ていました。

この鳥は、 Cordova さんのサニート農園の堆肥場脇でバナナと潅木が生えているところへ行くと、ほぼ間違いなくやって来ます。最初にこの鳥を見たときは、多分、 Mating Season だったのでしょう、雄の冠羽がこの写真よりももっと目立つように逆立っていましたので、「あれっ、カシラダカに似た鳥だなあ。」という第一印象を持ちました。総ての小型の野鳥に関して言えることなのですが、このタイランチョウの仲間も虫を餌とするので、見晴らしの良いバナナの葉のてっぺんによく止まって周りを見回しているのに出くわします。すると、南米の青い空がバックになるので、露出が空に引っ張られて鳥が真っ黒になりがちですが、逆に、鳥に無理して露出を合わせると、今度は、空の青が飛んでいってしまい困ってしまいます。もっと、狭い範囲をスポット測光できるようなカメラがもう少し手軽に手に入らないかなあ、といつもぼやいている次第です。多分、そんなこともデジスコを流行らせている一つの理由かも知れませんね。それはさておき、この野鳥は他のタイランチョウと較べると、バナナ園ではサニート農園でも、目にする機会が少ない鳥です。私は日本でも見かけるような、可愛く地味だけれどちょっとした特徴のあるこの鳥が好きで、バナナ産地視察に同行してくれる仲間の中に鳥好きがいる時はこの鳥を勧めるのですが、エクアドールまで来て、こんな地味な鳥よりも、もっと派手な野鳥を見たいと皆さん思うのか、あまり芳しい反響はありません。ただし、今まで何回も書いて来ましたように、 La Costa では原生林が広い地域で消滅し、アンデス西山麓にまで行かないと原生林は残っていないので、皆さんが思い描いているような派手ではっとするような野鳥はアンデスに行くか、種類によっては、アンデス山麓の中にあるミンドなどのような自然観察地に行かないと見ることはとても難しく、よほどの幸運に恵まれないと写真を撮ることは出来ないでしょう。

Southern Beardless Tyrannulet(キバラメグロハエトリ:Camptostoma obsoletum)

後ろ向きで、半分逃げ腰の Tyrannulet

もちろん、人の趣味、興味の対象、あるいはその人の生き方、生き様は当然様々で、それがまた良いところであり、民主主義の基でもありますので、そのことをここでどうこう言うつもりは毛頭ありませんが、昨日も、「お前、還暦を越えて生きてきて、そんなことに今更何を感心しているのだ。」という体験をしました。現在この原稿を、エクアドールへ主張する途中、弟家族が住んでいるヴァンクーヴァーに立ち寄って書いていますが、昨日、海辺に建つホテルにチェック・インした時に、予約していた部屋の掃除が終わっていなかったので、湾に面したレストランで昼食を取りながら、ぼやっと時間潰しをしていました。曇り空の窓の外はカモメたちがひっきりなしに飛び交っていたので、今まで、30年ほどの間ヴァンクーヴァーで経験したことごとを漫然と想い起こしていました。周りのテーブルには、業界のコンヴェンションに参加している大勢のアメリカ人や、カナダ人、英語のアクセントなどから、帰化してあまり時が経っていないだろうヨーロッパ系のビシネスマン達が会議の議題を話題にしながら食事をしていました。その時、カモメたちの中に大きな鷲がゆったりと入って来たので、はっとして眼をこらすと、白頭鷲でした。ただし、頭の白い羽は未だ十分生えそろっていない若鳥でしたが。まさか、ホテルのレストランの窓際から40メートル程の所まで、 Bold-Eagle (白頭鷲)が飛んで来るとは思ってもいなかったので、私は反射的に立ち上がっていました。それを見て、横にいたコンヴェンション参加者の二人の男女は、呆れたように私に目をくれると、何事も無かったかのように二人の会話を続けました。白頭鷲はゆっくりと円を描きながら高度を上げ西の方へ飛んで行ってしまいました。周りにいた他のコンヴェンション参加者の中にも鷲に興味を示す人はいませんでした。ヴァンクーヴァーで開かれたコンヴェンションに参加していて、食事中に白頭鷲が飛んで来ても、全く興味を示さない、これも人様々か、と納得した訳です。鳥好きには考えられない反応の仕方でした。

野鳥に興味を示さない人の方が多いのですから、バーダーの中に地味な鳥に殆ど興味を示さない人がいても、おかしくはないですよね。