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No.90 Rufous-tailed Jacamar

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、" Rufous-tailed Jacamar ( アカオキリハシ:Galbula ruficauda )"です。

Rufous-tailed Jacamar ( アカオキリハシ:Galbula ruficauda )

何かの気配に、逆方向に目を向けたアカオキリハシ。

エクアドールには9種のGalbulaの棲息が記録されていますが、このJacamarだけがLa Costa(ラ・コスタ=太平洋岸)で見られる唯一のGalbulaで、他はアマゾン地区とアマゾンに続くアンデスの東山麓に棲息しているとガイド・ブックに説明があります。興味深い一つの現象は、このJacamarに限らずかなりの種類の野鳥、特に中米やコロンビアでも見られる鳥が、エクアドールではアマゾン側にはいるが、La Costa にはいないと説明されているものがあることです。お手元に詳しい中南米、或いはコロンビアの地図がある方はパナマとコロンビア、そして、エクアドールの所を開いていただきたいのですが、すると、パナマから南下して行くとコロンビアの中央部には4,000メートルを越える高峰をいくつも抱えたアンデス山脈が南北に連なっているのが目に入ります。もしも野鳥たちがパナマ地峡から南下して来たのであれば、高いアンデス山脈を、危険を冒して越えるよりもコロンビアの太平洋沿岸部に沿って南下し続け、エクアドールのLa Costaに棲み付く方が自然に思えるのです。ですから、アマゾン地区に多くの種、変種、亜種が見られ、La Costaにそれらが顕著に少ないものは、もしかすると、アマゾン地帯で勢力を拡大し、北へ移り続け、オリノコ流域からカリブ海沿岸に達し、海岸沿いに西に向かったのかなあ、そして、その一部がウラバ湾から南下してエクアドールのLa Costaに棲息するようになったのかもしれないなどと、素人が勝手に想像して楽しんでいます。野鳥のDNA解読が進めばその説明はなされるものと期待しています。

Rufous-tailed Jacamar ( アカオキリハシ:Galbula ruficauda )

静かに餌の蝶を待っていたアカオキリハシ。

もちろん、世界には8,000メートルのヒマラヤを越える鶴の群れもいることは、TV番組で見ましたが、それでも上昇気流を探し、それに乗るのはとても難しく、多大な危険を伴うものだと説明されていました。渡りをするツルのような鳥でさえ、高い山脈を越えるのは至難な業なのに、飛翔力の弱い普通の野鳥には、たとえ、8,000メートルではなく、4,000から6,000であっても、アンデス山脈を越えるのはよほどの理由がなくては決行しないのではないかと想像します。

このアカオキリハシはオリートの産地、マナ地区で撮影しました。その日も、同業の仲間達とマナ地区へ入り、有機栽培のオリート農園の視察に向かっていました。私は、オリート農園に多いLemon Rumped Tanagerや、そこを流れている小川に群れているタナゴなどの小魚、そしてそれを狙うGreen Kingfisherなどに気を取られていました。すると、でこぼこ道を走っていたジープを止めて、「セニョール・イート、ほら、左側に綺麗な鳥がいるでしょう。最近、よく見るようになった鳥なんですよ。」と、オリートの担当インスペクターが目顔で教えてくれた方を見ると、この美しい鳥が目に入りました。早速レンズを向けてシャッターを切り続けていると、後続の四輪駆動がガタガタ道を騒々しく近づいて来たので、このアカオキリハシは飛んで行ってしまいました。