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No.89 Spotted Sandpiper

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、" Spotted Sandpiper (アメリカイソシギ:Actitis macularia)"です。

Spotted Sandpiper (アメリカイソシギ:Actitis macularia)

堆肥場を作る時に、土台固めに集められた河原の石の間を歩いていたアメリカイソシギ

このアメリカイソシギも前回のアメリカヒバリシギを撮った、モカチェ市の女性市長Andradeさんのサニートバナナ農園“SanMarcos” で撮ったものです。このシギも5月から7月は目撃される例は少ないと書かれています。ただ、このシギは海辺はもちろん、川岸、湖沼地帯、そして、アンデス高原の川辺でも観察されているそうで、その生息域が低地のLa Costaからアンデス高地にまで及んでいるのには驚かされます。このシギのもう一つの特徴は、普段は一羽で餌を探し回ることで、そのためか私の手元のポジでも、複数で写っているものはありません。シギやチドリは群れを成して行動するものだという先入観がありますので、その意味でもちょっと変わったシギという事になりますか。また、和名のイソシギというのも、この鳥の行動パターンから考えると、何百キロも内陸に入ったこの農園にやって来ること、まして、アンデス高原でも見られることなどを考えると、どうも紛らわしい命名だなあと思います。話はちょっと飛躍するのですが、新大陸の野鳥の和名に関しては、私がよく読ませて頂いている中米コスタリカで活躍されている、鳥見のプロの方のホーム・ページでもしっくり来ないものが少なくないという意味のことが書かれていましたので、時々違和感を持つのは私だけではないようです。三・四十年前までは、海外旅行が今のように一般化していなかったので、外地(古い表現ですみません)、まして中南米で会う日本人の多くは企業の海外出張の人達ばかりで、一般の観光客は殆どいませんでした。これからは、野鳥研究家や学者さんがどんどん予算を取って、新大陸の野鳥を、標本や写真でなく、現地で生きている姿をその眼で見て、野鳥の和名を見直していただければと思っています。英語の呼称はちょいちょい変わっているようです。

Spotted Sandpiper (アメリカイソシギ:Actitis macularia)

堆肥場コンクリートの壁の上を歩き回っていたアメリカイソシギ。

サニート農園の堆肥場に食虫の野鳥、特に陸鳥がやって来るのは分かりやすいのですが、Andradeさんの農園のように大きな川の脇に位置していると言っても、Collared Plover, Least Sandpiper, Spotted Sandpiper, Lesser Yellowlegsといった水鳥がそこの虫を食べにやって来るというのは興味深い現象だなあ、といつも思っています。サニート農園という循環型で地球に優しい農業栽培環境の中にある堆肥場は、我々人間の眼に見える大きさの虫は当然、虫眼鏡サイズ、或いはそれよりも小さい虫も多く湧いて来ており、それらを見ることの出来る野鳥達が、陸鳥、水鳥を問わずやって来るのではないかと想像しています。Animal PlanetやNational Geographic Channelの自然番組の中でよく使われる表現、”Easy meal”が三百六十五日、四六時中そこにあって、そこで働いている人間は、普通の人間と違って野鳥を苛めないので、陸鳥や水鳥がやって来るのでしょう。ただし、堆肥作りの主役のミミズをほじくり出すタイプの野鳥は追われますが、一応それは、まあ、形だけなので野鳥は生命に対する危機感は持っていないようです。ですから、日本国内での(ただし東京都区内は除く)カラスと人間との関係のようなものだと思っていただければよいと思います。

私は「なんでこの鳥を“Spotted”と命名したのだろう。」と、疑問に思ったので、ガイド・ブックをよく読んでみました。写真の羽、頭部そして腹部を見て頂ければ分かる様に普段はspotが無く、繁殖期になると斑点が現れるそうです。