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No.87 Galapagos Blue-Footed Booby

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、" Galapagos Blue-Footed Booby(ガラパゴスアオアシカツオドリ:Sula neboxi excisa)"です。

Galapagos Blue-Footed Booby(ガラパゴスアオアシカツオドリ:Sula neboxi excisa)

North Seymour島で雄の熱心な求愛に、雌の方も答えてくれて、二羽が踊り始めたところ。

エクアドールには5種のカツオドリがいますが、そのうちの3種はガラパゴス諸島海域にも棲息しています。ガラパゴスアオアシカツドリ、ガラパゴスマスクカツオドリそしてガラパゴスアカアシカツオドリです。一番棲息数が多いのが今回取り上げるアオアシカツオドリで、岸辺近くで小魚を取り、営巣もブッシュの中や、周りに低い潅木などがまばらに生えている平坦な場所で行います。セイモア島では、観光客が唯一歩く事を許可されている、幅1メートル強の踏み跡と呼んだ方がピッタリするような歩道の上に巣を構えて、卵を産み、抱卵します。巣の境界線はこの鳥が糞を放射状に飛ばして描いた半径1メートルほどの円で、この巣に近づくものは鳥であれ、人間であれ、凄まじい勢いで追っ払われます。鵞鳥のように人間の後を追って来るようなことはありませんが、大概の観光客は後退りしてしまうほどです。


Galapagos Blue-Footed Booby(ガラパゴスアオアシカツオドリ:Sula neboxi excisa)

強い海風を後ろから受けて、前方を凝視し続けていたアオアシカツオドリ。

この鳥は、主に二つの点でバーダーの興味をひいています。一つは、Mating Seasonになると、真っ青な足と水掻きを誇らしげに見せるように交互に引き上げながら、羽をいっぱいに広げゆっくりと歩き回り、時々天を仰いで、「ひゅうー。」と鳴き声を発します。そんな優雅でユニークな儀式を演じてパートナーを選ぶ習性と、もう一つは、この鳥は普段、マングローブの茂る岸に沿って一定の高さを保ちながら飛び回り、ボラの小さいの、湘南ではイナッコと呼ぶような、小魚を探し、見つけると垂直に一気にダイブする姿です。一羽でダイブする姿だけでも見る者を魅了するのに十分なのですが、時として、小魚の大きな群れが、カツオのような大型の魚の群れに追われて海面に沸き上がるように盛り上がる現象、これを日本ではナムラと呼びますが、このナムラを何処から見つけるのか、あっという間に何百というアオアシカツオドリを中心とした海鳥の大群が集まり、空中から水しぶきを上げながら一斉に飛び込んで行く壮大な海のイヴェントに出会うことがあります。そんな光景に接することが出来るのは本当に運次第なのですが、個人の写真集の中でも、大自然をテーマにするTVプログラムの中でも、この光景を大きく取り上げているのを見ても、いかに写真好きを夢中にするものなのか想像して頂けると思います。私も今まで、十数回ガラパゴスに行っていますが、この壮大なイヴェントに出くわしたのは、たったの三回だけです。

そんな僥倖を望まなければ、アオアシカツドリをガラパゴスで見るのはちっとも難しいことではなく、我々がちょっと山に入ればメジロはまず見ることができるのと同じぐらい、いやそれ以上の確率でこの海鳥を目にします。ただし、この鳥の求愛ダンスを見るためには、Mating Seasonに行かなければなりません。

また、この鳥を含めた海鳥たちが何百年、何千年にわたって孤島に作り上げた、フンの層はグアノと呼ばれ、窒素燐酸化学肥料が簡単に作られるようになるまでは、貴重な肥料でした。現在でも、有機農業には欠かすことの出来ない天然肥料として重宝されています。勿論、サニート栽培にも使用されます。