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No.84トノサマガエルとガマガエル

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、" トノサマガエルとガマガエル (和名、学名ともに現在不明) "です。

トノサマガエル (和名、学名ともに現在不明)

バナナ水洗い場の水槽の縁で一休みしていたトノサマガエルのような蛙。もっと小さな、日本のアマガエルに似たのはちょいちょい見かけるのですが。

トノサマガエルと書きましたが、日本のトノサマガエルに似ていると私も私の友人も思っているだけで、専門家に言わせたら、いや違う、正式には「ナニナニガエル」というのだと言われるのでしょうが、その点は勘弁してください。今、前回のコラムに書きました蛙に詳しい私の友人にこれらのカエル(複数)の名前を調べてもらっていますが、日本のマニアの方にとっても、このトノサマガエルもガマガエルも珍しいものだそうです。名前が判り次第、本ホームページでお知らせします。このトノサマガエル似のカエルはEl Oro州、Tenguel(テンゲル)地区にあるサニート農園のPacking House(選果・包装工場)で撮ったものです。その日も幾つかの農園を見て回って、このPacking Houseに来たときには昼をだいぶまわっており、作業も大方終了して作業員達も昼食を取っていたので、バナナ水洗い水槽の周りは静かでした。何か動くものがいるので、ひょっとそちらを見ると、このカエルが水槽の縁に座ってこちらを見ているのが目に入りました。「緑色をしたトノサマガエルみたいな蛙だなあ。」と思いながらシャッターを切りました。このカエルにしたら、「せっかく一休みしようと思ったのに、おかしなのが来るから、休めないじゃないか。早く向こうへ行ってくれ。」と言っているようでしたので、二、三枚シャッターを切っただけでその場を離れました。そのあと、このカエルに会うことはありません。ヒキガエルの仲間には、大きい奴、小さい奴を含めて、ちょいちょい会うのですが。水槽は作業が終わると水抜きをして、タイルを清潔に保つようにしますので、このカエルが水槽に棲んでいる筈はありませんし、こんなに大きなカエルがバナナの幹や葉の間に潜んでいたとも考えられないので、水洗いの為に持ち込まれたバナナの房が十ほども付いている全房(Stem)の中から出て来たという事でもないでしょう。Packing Houseの脇にある水路からやって来たのではないかと皆で話していました。

ガマガエル (和名、学名ともに現在不明)

ハラミージョさんのサニート農園“La NuevaEsperanza”に棲む蛙族の主。

写真2のガマガエルは、Dr. Jaramillo(ハラミージョさん)のサニート農園“Nueva Esperanza(新たな希望)”に棲みついていて、ちょいちょいお目にかかる奴です。大きさは日本のガマガエルの大きいもの位で、こんな顔つきですから迫力はありますよ。ところが、前回のところで触れたカエル好きの私の友人に言わせると、「伊藤さん、ガマガエルも可愛いでしょう。」ということになります。「ええ、まあ…」とだけ答えて後の言葉は濁すしかありませんでした。ガマカエルと来れば、古い世代の日本人には大蛇というのが定番ですが、このホームページに今のところ蛇の写真を載せる予定はありません。バナナ園には、X(エキス:学名 Bothrops Atrox)と呼ばれる2メートル程にもなる猛毒の蛇や、Coral(コラル:学名 Micrurus sp)と呼ばれるこれも猛毒の蛇、そして現地で“Matacabllo(和訳:馬殺し学名Boa constrictor constrictor)”と呼ばれるBoa等がいます。Xは猛毒を持ち、とても攻撃的な毒蛇で、一年に何人もの農業従事者が死ぬくらいですので、私達がこの蛇を見るときは、大概、殺されたものか、マチェーテ(1メートル程の作業刀)で切られ死に掛けている状態のものばかりです。もっとも、傷も負っていないピンピンしているXに出会ったら、写真を撮っているような悠長なことはしていられません。急いで逃げなくては命に関わります。どちらにせよ、農園の中に蛇や蛙が棲んでいるというのは、生態系上は好ましいことで、その証拠に化学農薬、特に、殺鼠剤や殺虫剤を大量に使用する農園には蛙も蛇もいません。