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No.80  Ecuadorian Piedtail (和名:不明、学名:Phlogophjlus

Photo & Text:Motoaki Itoh

"Ecuadorian Piedtail和名:不明(Phlogophjlus)"

Ecuadorian Piedtail (和名:不明、学名:Phlogophjlus)

Fooded Siskin(ズグロヒワ)の所で紹介した、Cotacachiに在るフランス料理レストラン、La Mirageの庭で撮ったEcuadorian Piedtail。

今回から3回続けて、久し振りにハチドリを取り上げます。ただし、皆アンデス高原地帯のものばかりです。それというのも、 La Costaのバナナ園で目にするハチドリは、圧倒的に第25回に載せたハイバラエメラルドハチドリが多く、他のハチドリは殆んど見かけないため、 他のハチドリの写真がないのです。確かに、市街地の鉢植えや花壇には異なったハチドリもやって来ますし、オリート農園では他種を見ることもあります。 図鑑"The Birds of Ecuador"に書かれているように、太平洋岸、WestあるいはLa Costaと呼ばれる地域にはかなりの種類のハチドリがいますから、 それらが私たちの目に止まってもいいはずなのですが、バナナ園とその周辺で目にするのはRufous-Tailed Hummingbird(ハイバラエメラルドハチドリ)ばかりなのです。 ここで「バナナ園」というのは、化学農業物質の使用を顕著に減らした農園のことで、通常のバナナ栽培をしている所ではハチドリのように農薬類に敏感な野鳥は、 ハイバラエメラルドでさえ農園の周囲の林や立ち木、園内の居住区の花壇などにはやっては来ても、バナナの林の中ではあまり目にしません。

またまた素人考えで申し訳ないのですが、このハチドリはバナナの花の蜜を吸うので、La Costaではバナナの花の蜜を吸わない他のハチドリを圧倒したのではないかと 思います。バナナの房にビニールの袋掛けをするのはバナナの花が咲いてから一週間以上経ってからですので、袋掛けがされる前の花を探しては、花から花へと飛び回って ハイバラエメラルドハチドリが蜜を吸いに来ます。一度袋掛けされると、房の花には下部の袋が結ばれていない所からしか近づけないのでハチドリは諦めますが、その代わり マミジロミツドリが入り込み、花の蜜を吸います。

Ecuadorian Piedtail (和名:不明、学名:Phlogophjlus)

同じ庭の花壇でランタナの花の蜜を吸っていたEcuadorian Piedtail。見事なまでに、その羽模様は保護色になっていると思いませんか。

数十年前にLa Costaからは原生林が姿を消し、牧場、水田、とうもろこし畑、さとうきび園、バナナ園、カカオ園、その他の果樹園といった、営農規模が小さい所で15ヘクタール(町歩)、 巨大な所では数万ヘクタールにもなる近代的monoculture(単一農作物栽培)が営まれているので、植物の多様性が広い地域で失われたことが多くの野鳥をアンデス山麓に追いやってしまい、普段 目にするハチドリの種類も少なくなった原因ではないかと思っています。

その一方、アンデス山麓には原生林が広く残り、アンデス高原では古くから文明が発達していたにもかかわらず、La Costaのようには近代的monocultureが発展しなかったためか、 昔ながらの果樹園がそこここで見られ、また家々の庭には多様な花が咲いているので、いろいろなハチドリを見ることが出来ます。したがって、私の持っているハチドリの写真も アンデス高原で撮ったものがほとんどです。ただし、ハチドリは上記の図鑑には131種類ものイラストが載っているほどで、つまりそれだけの種は確認されているという事ですから、 第26回に載せたルリムネハチドリのところでも書いたように、イラストとはぴったりしないもの、互いがそっくりで、上記図鑑の著者も「フィールドで識別するのは困難」と書いているほど 似通ったものも多いので、その識別の難しさはタイランチョウの比ではありません。それにハチドリの場合、個体差も大きく、亜種、変種も多いのではないかと勝手に思い込んでいます。 例えば、今回取り上げたハチドリも、図鑑のEcuadorian Piedtailのイラストとは幾つかの点で微妙に違っているのですが、他のハチドリのイラストとは似ていませんし、棲息分布図等から考えて、 これに違いないだろうと決めた次第です。