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No.79  Long-tailed Mockingbird

Photo & Text:Motoaki Itoh

"Long-tailed Mockingbird(クロヒゲマネシツグミ:Mimus Longicaudatus)"

Long-tailed Mockingbird(クロヒゲマネシツグミ:Mimus Longicaudatus)

グァヤキールから100キロほど西に行った海岸地帯の農園で、電線に止まっていた Long-Tailed Mockingbird。これ以上接近することは出来ませんでした。

ガラパゴスマネシツグミ(第 55 回掲載)のところで触れたのですが、エクアドールにはガラパゴス諸島に1種と大陸に3種の Mockingbird がいます。ガラパゴスのものは、棲息する島によって亜種とされているものもあり、ある亜種は Red Data Book に記載されています。

今回取り上げたクロヒゲマネシツグミは、ラ・コスタ(沿岸地帯)でも特に砂漠に近いような乾燥地域に棲息していますので、ごく限られたバナナ園の周りでしか見ることはありません。基本的に、バナナという巨大な草は、大量の水を必要とする反面、地下にある大きな球根を腐らせないためにも、水捌けが良くなくてはならず、一方、肥料食いなので肥沃な土地でないと育たないという、結構難しい栽培環境を求めるのです。特に、反当り収量を追求する専業栽培では、上記のような条件は不可欠となります。したがって、大河が長い年月をかけて作り上げた沖積土壌が、バナナ栽培には理想的だとされています。しかしエクアドールには、大昔に水量豊かな川が沖積土壌を作り上げ、現在は砂漠のようになっている土地は、ごく一部にしか存在しません。そのような場所は有機果実栽培には理想的なので、ここ十年程の世界的有機食品ブームに乗って、オーガニック・バナナ栽培が試みられています。ただし、そのような所では、もともとの地域の住民にとっても水が不足がちであったため、水量確保の面からも農園の拡張には限度がありますが、エクアドールのこの場合は有機栽培バナナですので、化学農業物質による水質汚染といったもう一つのより深刻な問題は起こしていません。しかし、国によっては、昼夜の寒暖のより大きな温度差を求めて、高地に普通栽培バナナ園を展開するため、森林資源の違法伐採、国立公園内への違法侵入、水源汚染容疑など、さまざまな問題を起こしている所もあります。

Long-tailed Mockingbird(クロヒゲマネシツグミ:Mimus Longicaudatus)

ガラパゴス諸島、サンタ・クルス島の Galapagos Mockingbird。こっちの方は近くまで寄れました。野鳥が人間をかなり傍まで来ることを容認してくれるのは本当にありがたいことです。

いまや、自然環境保全と農業を両立させるためには、Sustainable Development(持続可能な発展)というコンセプトから生まれた表現、「 Sustainable Agriculture 」を推し進めることが大事であるという声が、フィリッピンの新聞などにも頻繁に載るようになったのは、喜ばしいことだと思います。ただ、口で「 Sustainable Agriculture 」と言うのは簡単ですが、実行するのはとても難しいことで、 Sanito, Organic Bananas など、減化学物質栽培バナナ、有機栽培バナナの面においては先駆的なエクアドールでも、このように手のかかる農業活動を実施している農園主は未だ少数派に過ぎないことも事実なのです。皆、その必要性と重要性を頭では解っているのですが、いざ実行しようとなると、様々な不安が先に来て、実践に踏み切れないようです。このような環境に配慮した農業が科学者達の協力を得て次世代では地球の方々で普通になっていることを願っています。

極端な乾燥地帯のバナナ園に行く機会が殆どないため、クロヒゲマネシツグミのまともな写真がありませんのでこの一枚を載せ、比較のためガラパゴスマネシツグミを下に貼ります。