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No.78 Boat-billed Flycatcher

Photo & Text:Motoaki Itoh

"Boat-billed Flycatcher(オオハシタイランチョウ:Megarhynchus Pitangua)"

Boat-billed Flycatcher(オオハシタイランチョウ:Megarhynchus Pitangua)

餌の昆虫を見つけて、捕獲準備完了といったところ。クレメンティーナ農園で。

中南米の野鳥図鑑を頻繁にご覧になっている方はもうとっくに気が付かれていると思いますが、 Flycatcher の仲間はそっくりなのが多すぎて、我々素人のバーダー泣かせです。このオオハシタイランチョウは第六回に掲載したアカボウシヒタキモドキ(Social Flycatcher)と一見よく似ているので、近くで見ても間違いやすいのが困りものです。我々のように中南米によく行く野鳥愛好家は、タイランチョウ類を見慣れていますので、嘴の大きさと格好の違いに注意を集中すると識別は何とか出来ますが、中米や南米で初めてバード・ウォッチングをする人は、多分大いに戸惑うと思います。日本人のガイドの方が日本語で鳥の名前と特徴を教えてくれれば何とかなるでしょうが、市街地でも、郊外でも、最も頻繁に目にする野鳥であるタイランチョウを見る度に、英語で、ナントカ・ Flycatcher 、カントカ・ Flycatcher と言われたら、よほど英語に堪能な方以外は、こんがらがってしまうだろうと思います。

エクアドールの La Costa(太平洋岸)で鳥見をされたら、まず間違いなく、 Tropical Kingbird(オリーブタイランチョウ)と Social Flycatcher 、そして、この Boat-billed Flycatcher の三種だけでもこんがらがってしまうでしょう。その上、バナナ園では Bananaquit(マミジロミツドリ:第37回掲載)というタイランチョウでもないのに、タイランチョウのような羽模様をしているものや、 White-Throated Kingbird これがまた Tropical Kingbird によく似ていて、ちょいちょい見かけるし、その他にも Gray-capped Flycatcher などという、遠目には Socail Flycatcher にそっくりなのもいるので、日本に帰国後 、写真の整理をしていて、「オッ、違うよ、これ。」などと独りごとを言いながら、現地での間違いに気が付くことも年中です。

Boat-billed Flycatcher(オオハシタイランチョウ:Megarhynchus Pitangua)

サニート農園“ Hacienda San Miguel (サン・ミゲール)”で。 夕方、戻って来て一休み。

幸い、エクアドールの海岸地帯には、 Great Kiskadee(キバラオオタイランチョウ)、 Lesser Kiskadee(キバラタイランチョウ)などはいませんので、アマゾンに続くアンデス東山麓で鳥見をするほど面倒ではないと思います。しかし、多分アンデス東山麓での鳥見では、タイランチョウ類は他の珍しい野鳥の陰に隠れて、特殊なもの以外、一度説明されたらその後は殆んど無視されるでしょうから、混乱は少ないかもしれません。

今回のオオハシタイランチョウはどういう訳か、食虫の鳥ですがバナナ園の縁に植えてあるアーモンドの樹で見ることが多いので、手持ちのポジはどれもアーモンドの枝の中にいるものばかりです。