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No.71 Southern Rough-winged Swallow

Photo & Text:Motoaki Itoh

"Southern Rough-winged Swallow(ナンベイオビナショウドウツバメ:Stelgidopteryx Ruficollis)"

Southern Rough-winged Swallow(ナンベイオビナショウドウツバメ:Stelgidopteryx Ruficollis)

雨季、Cordova さんのサニート農園で、小雨に濡れながらバナナの葉の先端で羽休めをしていた Southern Rough-winged Swallow

このツバメは水辺を生活の場にしており、営巣はエクアドール・アンデスの西( La Costa 地帯)でも東( Amazon 地帯)でもおこなう、とガイド・ブックには書いてあります。どうりで同じサニートの農園でも、 Rio Quevedo (ケヴェド河)に接している、女性市長アンドラーデさんの San Marcos 農園や、エル・オロ州のコルドヴァさんの Santa Monica 農園など、多くの水鳥が見られる農園でこのツバメをよく目にするのだなあ、と納得しました。また、他のツバメと群を作って南へ渡りをするものもあると記されています。ひとこと付け加えますと、エクアドールは赤道直下に位置していますので、北半球との間を行き来する、つまり渡りをする鳥と、南半球との間を行き来するものの両方がツバメに限らずいます。詩的な表現では、「北帰行」する鳥と、「南帰行」する鳥が共存しているのです。


Southern Rough-winged Swallow(ナンベイオビナショウドウツバメ:Stelgidopteryx Ruficollis)

雨も止んだので、餌を捕りに飛び立つツバメ。

普通、サニート農園の堆肥場は1ヘクタールから4ヘクタール程の広さがあり、中には6ヘクタールもの堆肥場を抱えている農園もありますがその上や周りを、このツバメが他の種のツバメ達と飛び交っているのが見られます。熱帯地域の堆肥場では多様多種の昆虫が一年中絶えることなく、大量に発生し続けますので、ツバメ、タイランチョウなどの食虫の野鳥たちにとってはまさに天国のような所でしょう。最初にこのツバメを Cordova さんの農園で見た時は、「日本で見ていたツバメやイワツバメとはちょっと違うけど、ツバメはツバメだなあ。」というのが私の印象でした。たまたまその時、周りには見慣れた、と言うより、サニートバナナ農園の堆肥場に行けば必ず、そして、いつも間違いなくいる、マダラタイランチョウ(第 1 回掲載)とアカボウシヒタキモドキ(第 6 回掲載)しかいなかったので、テレ・レンズをこのツバメに向けて、ゆっくり撮影することが出来ました。添付した写真のように、このツバメは決して、人目をぱっと引くような、派手な羽色や長く美しい尾羽を持っている訳ではありませんが、何か素朴で見る者を和ませてくれる鳥です。今流行りの表現を借りると、癒し系の野鳥とでも言うのでしょうか。