バナナ園の野鳥と生き物 = バックナンバー =


No.70  Barn Swallow

Photo & Text:Motoaki Itoh

"Barn Swallow (ツバメ:Hirundo Rustica) "

Barn Swallow (ツバメ:Hirundo Rustica)

エナーノ・バナナ栽培農園、 Had. Los Alamos (ロス・アラモス)の電線に群れていたツバメ。 Barn Swallow は渡りをします。

前回はエクアドールのスズメを載せましたので、今回は、もう一つの誰にとっても馴染み深い野鳥、ツバメを取り上げます。エクアドールでは、ツバメは都市の中よりも田園地帯ではるかに多く目につきます。人家の軒に巣を作る鳥というイメージが我々日本人には非常に強いのですが、ラ・コスタ地域ではより餌の多い田園地帯、つまり、小さな集落、牧場、化学農薬の使用が少ない畑・田んぼ等で、ツバメが飛び交っています。バナナ園でも、サニート農園や有機バナナ園ではいつも何種類かのツバメを見ることができます。北や南に行ったり、帰ったりの渡りをするものと、居付きで渡りをしないものがいるようです。ただし、どれが渡りをし、どれがしないのかは Guide Book を注意して読まないと分かりません。ある種は「渡りをする」と、はっきり書かれていますが、他のものは、川の淵などで営巣すると書かれています。子育てをエクアドールでするのであれば、渡りはしないのかなあ、と推測するのですが、渡りをしないとは書いていないのです。

私どもが子供の頃は、どの街でも数十羽のツバメが電線に一杯止まっているのを見ることは、晩夏から初秋の風物詩でした。しかし、最近ではあまり目に出来なくなったのは残念です。エクアドールでは未だ、掲載した写真のように百羽、時にはそれ以上のツバメ達が電線に止まったり飛び立ったりするの見ることもよくあります。ただし、何処でもこんな風景が見れるかというと、そうでもありませんので、農薬使用の多い少ないが関係しているのかも知れません。また、ツバメがそのように群れている所からそう離れていない喬木の梢には、猛禽が止まっていることがよくあります。

Barn Swallow (ツバメ:Hirundo Rustica)

今まで、たびたび舞台になった、コルドヴァさんのサニート農園、 Santa Monica で。

様々な国や地方で、昔から人々にそれぞれの思いを込めて歌われるツバメ。ちょっと思いつくだけで、メキシコ・オリンピックの閉幕式で歌われた“ La Golondrina ”。本来の歌詞は、去って行った恋人の身を案じて、未だ思い切れない想いを切々と歌うものですが、メキシコでは別れの曲として広く歌われています。また、三大テナーのパヴァロッティが歌って日本でもよく知られるようになったイタリア歌曲“ Rondine al nido ”などがありますが、最近、「新シルク・ロード」の紹介番組でカザフスタンの民謡で「ツバメ」と言う曲を聴きました。素朴で、美しい旋律だなあ、と思いました。その他にも、この鳥を歌った曲はまだまだあると思います。それだけ人々の身近にいて、愛されている鳥なのでしょう。寒く暗い冬が去って、命が躍動し出す明るく暖かい春と共に戻ってくるツバメ。明るく比較的温暖な冬を過ごしている、私達、首都圏の人間と違って、陰鬱な厳しい冬を耐えて行かなければならない北国の人々がこの鳥に抱いている感情は特別なものだと想います。