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No.66  Golden-Olive Woodpecker

Photo & Text:Motoaki Itoh

"Golden-Olive Woodpecker(キンバネモリゲラ:Piculus rubiginosus)"

Golden-Olive Woodpecker(キンバネモリゲラ:Piculus rubiginosus)

もう少しで餌にありつけるところに人間が来て、迷惑そうなキンバネモリゲラ。

このキツツキの和名から連想されるような金色に近い羽色は、個体差もあるでしょうし、また当然のことですが、光の当たり方によっても違うのでしょうが、あまり見た記憶がありません。どちらかと言うと、 黄色がかったオリーヴ色と表現した方が正しいかと思います。まあ、“ Golden Olive ”ですから、間違った表現とはいえませんが。

キンバネモリゲラは、ペルーとの国境に近い南部「 El Oro(エル・オロ)州」の Machala (マチャラ)市、 Pasaje(パサッヘ)市、 Guabo(グアボ)市が作る三角地帯の中でよく見ます。当然、他の地域にも棲息していますが、この地域にあるサニート農園で頻繁に目撃しています。エル・オロ州のサニート農園は、この三角地帯と Tenguel(テンゲル)地区の2地域に集中しているのですが、テンゲル地区のサニート農園では今までこのキツツキを見たことはありません。テンゲルにも当然棲息していると思うのですが。

和名キツツキ、英語では“ Woodpecker ”、どちらも「木を突っつくもの」といった意味の命名ですが、スペイン語では“ Carpintero ”、木を加工する「大工さん」と呼ばれます。ドラミングを大工さんが木槌で木材を打つ音にたとえたのは、うまい表現だなあと思います。初めてエクアドールで産地周りをした時、ジープを運転してバナナ農園のイロハを教えてくれたエクアドール人の農業技師が、「あそこにカルピンテーロがいるよ。 ほらっ、見えるかい。」と、林を指差してくれましたが、キツツキが大工さん(カルピンテーロ)と同じ言葉だとは知らなかったので、私はきょときょとするばかりで、林の中には人間は見えないし、困ってしまいました。ほんの数秒もしないうちにキツツキがばたばたと飛んで行ったので、「 Que pena(ケッ・ペーナ 残念)。飛んで行ったじゃないか。」と言われて、キツツキを南米では大工さんというのだなあ、と、一つ単語を勉強したことがありました。

Golden-Olive Woodpecker(キンバネモリゲラ:Piculus rubiginosus)

3メートル下には何人かの農園見学者達がいても、慌てて飛び立つ気配も見せないので、ありがたく至近距離から一枚。

ここに載せた写真の一枚目は、今までに何回も紹介して来たエドガル・コルドヴァさんの Santa Monica (サンタ・モニカ)農園の入り口に立っている、丸太の電柱に巣くっている虫を夢中になって獲ろうとしていたキンバネモリゲラで、二枚目は El Recuerdo(エル・レクェルド)農園の堆肥場脇の木に良くやって来る鳥を撮ったものです。どちらの農園の野鳥も人間に苛められていないので、あまり人間を怖がりませんから写真は撮り易いので助かります。

どんな野鳥もそうですが、3年から5年ある場所で人間に苛められないと、その場所ではだいぶ人間慣れをするような気がします。ただ、小さな野鳥だとその平均寿命は、たいした根拠もないのですが1年から長くても3年位ではないかと思われるので、二世代あるいは、三世代にわたって人に慣れてくるのかなあ、と考えています。しかし、このキツツキなどは多分、小さなフウキンチョウなどより平均寿命は長いでしょうから、その個体が生きている間に、人間に対する接し方を変えて行くのではないかと勝手に解釈しています。日本でメジロ等の野鳥に果物をあげている方は、おそらく私と似たような体験をされていると思いますが、冬、食べ物が乏しくなってくると、メジロやヒヨドリは餌をくれる人を認識して、1メートルか2メートルのところで大口径レンズを構えても平気で果物を食べ続けます。そんなところは、エクアドールの野鳥も同じで、コルドヴァさんの所のように鳥を苛めない所では、野鳥にかなりの至近距離まで近寄ってシャッターが切れます。