自分の葉っぱの裏に小さな花を咲かせる蘭。Pahuma蘭園で。
今回は先回に続き、私ども、蘭の専門家や特別な愛好者ではない人間にとっては珍しい蘭を載せます。こう書いてきて、これはどうも変な表現だなあ、と自分でも考えてしまいました。そう、大部分の日本人にとって、日本の花屋さんで売っていたり慶弔の折に高価な花輪に使われている、美しく品種改良された多くの蘭以外は、原野に自生する殆ど総ての蘭が珍しいものなんですよね。日本の山の中に自生している蘭でさえ、私はもちろん一般の人々は目にすることがないのですから。ましてやエクアドールの山野に自生している原種の蘭は、その殆どが普通は珍しい蘭と呼んでも良いのかなあ、と思い直しました。そんな多くの自生蘭の中でもこの二つは、始めて見たとき、とてもインパクトの強い、そして珍しい蘭でした。
Pahuma の蘭園は、蘭園といっても Singapore にあるあの有名な Orchid Garden のような整然とした蘭栽培農園というようなものではなく、ささやかで素朴なものです。一見良く見かける好々爺といった風情の山主のおじいさんが、自分の山に流れている小さな谷川の両岸に、彼自身で自分の山から持って来た原種の蘭を木の枝やありあわせの針金で作った鉢のような物に移植して、そこここの草木の間に置いたり吊るしたりしている、文字どおり手作りの可愛い蘭園と言った表現がぴったりする様なところです。 最初に載せている蘭は、そこでおじいさんが手にとって見せてくれた、ご覧のように小さな蘭です。蘭の仲間には、この蘭よりもまだ小さな蘭があるのを見たのは7年前始めて Mindo を訪れた時で、仲間の皆で感心しながら見入っていたのを想い出します。
ガラパゴスの蘭。小さな、僅かに緑がかった白い花を咲かせ、時が経つにしたがってその色は、この写真のようにクリーム色に変化して行きます。とても慎ましやかな花です。
二番目に載せた蘭は、「ガラパゴス諸島に自生する、唯一の蘭の種です。」と、有名な女性ガイドさんが説明してくれました。それは何度目かにこの島を訪れたときで,「セニョール・イトウはガラパゴスの動植物や砂、石などの自然物を持ち帰るような人ではないのがわかったので教えますが、これがこの諸島で唯一の蘭で、 Orquidea Endemica (固有の蘭) です。」と、 Scalesia の雨林の中で教えてくれました。余談ですが、ガラパゴスでは自然保護のため、島のものを外へ持ち出すことは厳禁です。諸島内にある、一般観光客が使用する二つの空港では、島を出る際に非常に厳重な持ち物検査が行われます。生き物はもとより、草や木、岩、小石、砂までが持ち出し禁止品とされていますので、リュックの中からこれらの物を引き出され、没収されて恥ずかしそうにしている観光客をよく目にします。日本人の中には、ガラパゴスの白い砂を、自分で作っている盆栽の岩の周りに置いてみたいなあ、などと私どもをドキットさせる発言をする人もいます。また、これは聞いた話ですが、南米のきれいな草花の根を日本に持ち帰ろうとして、マイアミ空港に設置されている、麻薬持込防止のための植物発見器で引っ掛かった人もいたとの事です。如何に趣味が高じても、動植物を正規の手続きを踏まないで日本へ持ち帰ろうとするのは、遠慮して欲しいものです。