田辺さんの Sanito(サニート)農園の中に在る堆肥場で、堆肥の材料にする為、熟成させていたバナナを食べに来た Thick-billed Euphonia 。
「スミレ・フウキンチョウ」とは、優雅な名前をつけてもらったものだなあ、と言うのが私の率直な感想で、そのネーミングに感激しています。私は、この Euphonia の仲間の愛らしさが大好きなのですが、最近その姿を見る機会が少なくなっているのが気掛かりです。また、体が小さいのと、タイランチョウのような攻撃的性格ではないので、常に周りを気にして人間を近づかせませんし、その上、チョコチョコ動いてばかりでじっとしていることがほとんど無いので、写真はとても撮りにくい野鳥の一つです。
この鳥を、始めて見たのは10年程前のことで、どうにかして、エクアドールの人達が普通のバナナよりも好んで食べている、日本ではモンキー・バナナと呼ばれる糖度の高い、オリートを日本へ持って来れないかと色々試行錯誤していた時でした。当時は、ヴァキューム・パック包装で輸送していましたので、現在利用している CA( Controled Atmosphere )輸送方式のようには、デリケートなオリートをうまく運んで来ることは出来ませんでした。オリートは糖度が非常に高く、約26度から28度もあり、カロチンも普通のバナナが98μgであるのに対して411μg(財団法人、食品環境検査協会調べ)もあって食味はとても良いのですが、なにせ皮が薄く、ちょっとしたことでも表皮が変色してしまうので、エクアドールから日本までの長距離輸送が難しく、頭を痛めていました。何はともあれ、産地回りだけはしておこうと、その日もマナ地区へ入り、でこぼこ道を、頭を車の屋根にぶつけながら、奥地にあるオリート農園に向かいました。
Mana 地区のオリート農園にやって来た、 Euphonia 。頭の黄色い円がはっきりわかりますよね。
10年前は、まだ山の中までバナナ園が作られていなかったので、マナ地区は文字通り様々な野鳥で一杯でした。まして、オリートのヨーロッパ、アメリカ合衆国、日本への輸出が始まっていなかったので、オリート農園のそこここには黄色くなった果実が捨てられていたり、収穫漏れのものが枝で黄色くなっていたりしていて、その果実を啄ばむ野鳥が沢山見られました。そんな野鳥の群の中に Thick-billed Euphonia と Orange-Crowned Euphonia が混じっていたのです。この地域は、それでもまだ他の地域と比較すると、鷹類、啄木鳥、野鳩、フクロウ、ハチクイモドキ、キリハシ、ヤマセミ、フウキンチョウ、タイランチョウ、インコ、ハチドリなどの野鳥や、獣、爬虫類、蝶、ランやブロメディアに代表される南米の草花を割合簡単に見ることができます。
今回の、大きくトリミングした Euphonia の写真は、「素敵な宇宙船地球号」の撮影スタッフが入った田辺正裕さんの農園で、輸出規格外のバナナを堆肥にするため積んでおいて黄色くなったものを、啄ばみに来た鳥を撮ったものです。10月24日の夜 11 時 15分に放映される番組の撮影に立ち会っていた人達の話を聴くと、「伊藤さん、あの人達は流石プロ集団、ほんとうに様々な野鳥とその生態を撮っていましたよ。がっかりするから番組見ない方が良いんじゃないですか。」と、冷やかされました。私は見ますよ。