バナナ園の野鳥と生き物 = バックナンバー =


No.54 Scrub Blackbird(Dives warszewiczi)

Photo & Text:Motoaki Itoh

"Swallow-Tailed Gull(アカメカモメ)"

Swallow-Tailed Gull(アカメカモメ)

Plaza de Sur島の断崖の際を歩いていた私達観光客の様子を見に来た アカメカモメ。

水鳥はもうかなり取り上げてきましたが、カモメとアジサシが入っていないのに気が付かれた方も多いと思います。エクアドールにはどちらも棲息していますし、その種類も少なくはありません。アジサシは海老養殖場ではたくさん見られますが、カモメ同様、バナナ園まで入って来るものはありません。またエクアドールの海岸地帯でよく目に付くカモメは、バナナ園やその脇の水田まで飛んで来なくても、海やグァヤス河の上を飛んでいれば餌に事欠くことはないので、内陸まで入って来る必要はないのでしょう。 Cuenca de   Guayas (グァヤス盆地)と呼ばれるラ・コスタの中心部に位置する平野は、われわれの感覚で言う盆地とは全く異なり、まさに平野そのもので、そこを流れるグァヤス河は、実質的には殆ど高低差のない平原を、数百キロにわたり土色をした水をたたえて流れて来ます。その河口は広く、太平洋に真っ直ぐ流れ込んでいるので、干満の差が非常に大きく、上潮になると、5ノット位の速さで流れが逆流します。そのような環境のため、汽水域は河口から80キロ程上流まで広がっています。カモメはグアヤキール市の船着場へ行くといつでも目にすることができます。


Swallow-Tailed Gull(アカメカモメ)

同島の崖淵で昼寝をしていたアカメカモメ。

今回は、カモメの中でも、ちょっと変わったものを紹介します。このアカメカモメはガラパゴス諸島の固有種と言われています。このカモメは、自然ドキュメンタリー番組に出てくる大柄なカモメ達のような凶暴な面は持ち合わせていないように思います、というかそのような場面を目にした事はありません。もっとも、体もトウゾクカモメのようには大きくありませんし、他のガラパゴス諸島に棲む鳥たちと同じように人間を恐れませんので、我々が近づいても、おとなしくしています。また、我々観光客が巣の傍へ行っても、アオアシカツオドリのように人間を嘴で激しく威嚇するようなこともしません。「なんで、人間が野鳥の巣の傍へ行くのだ。」と、怒られそうですが、その訳は、ガラパゴス諸島を訪問する人間は、政府の特別許可を得た科学者、自然ドキュメンタリー撮影者などを例外として、幅1メートル程の決められた踏み跡を歩かなければなりません。一方、アオアシカツオドリは、石も木や草もない平らな場所に卵を産み、子育てをしますので、観光客が踏み固めた道が格好な巣作りの場所になるのです。したがって、定められた道を歩いていると、必然的にアオアシカツオドリの巣にぶつかり、この鳥に威嚇される訳です。しかし、アカメカモメは人間が近づいてきても、眼を開けるだけで静かにしています。

このカモメは、崖の淵を太平洋の強い風を幅広の翼に受けてフワリフワリと舞うように飛んでいることがあります。こんな時は、飛翔姿を撮るのも簡単です。ガラパゴスで飛翔を撮るのが難しい鳥のランキングを付けると、 1 番は、流線型の姿をして、ときにはツバメやハトのようなスピードで飛ぶ Red-Billed Tropic Bird( アカハシネッタイチョウ ) 、2番は Masked Booby ( ガラパゴスマスクカツオドリ )、3番目は Frigate Bird (グンカンチョウ)、4番目は Blue-Footed Booby( アオアシカツオドリ ) 、5番目がこの Swallow-Tailed Gull 、そしてペリカンの順番になるかと思います。たまに見るアホウドリは、 Masked Booby と似たような難しさです。