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No.52  Little Blue Heron

Photo & Text:Motoaki Itoh

"Little Blue Heron(ヒメアカクロサギ)"

Little Blue Heron(ヒメアカクロサギ)

Ledesmaさんの有機栽培水田で。オスが低姿勢でメスの傍へ寄って行くところ。

この紺色をした鷺に気が付いたのは、 3 年程前のことで、それまで 40 年以上もの間グアヤキール市の北に展開する 20,000 平方キロ強の湖沼・水田地帯を車で行き来していた筈なのに、まったくこんな鷺がいることは気が付きませんでした。ハイ・ウェイを後続の車を気にしながら高速で走っていると、目に留まるのは、白い色をした鷺、大型の水鳥、電線にとまっているタイランチョウ、ミドリヤマセミ、クビワヤマセミ、タニシトビなどで、水際にいる小型の水鳥はせいぜいレンカクぐらいです。

グループの中に喫煙者がいると、スモーキング・タイムのために途中で車を止めるので、そのときゆっくりと周りを見渡しますが、バーダー用スコープを携帯していませんから、都会生活で視力の衰えた私の眼で観察できる範囲でしか鳥の確認はできません。たまに、「おっ、何だ。」というものが目に入った時はテレ・レンズを装着したカメラでその生き物を確認します。スモーカーに言わせると、私が珍しいものや、写真に撮りたい鳥を見つけて車を止めてくれるときがスモーキング・タイムになるんだと言い張っていますが。


Little Blue Heron(ヒメアカクロサギ)

オスは羽を広げて求愛のディスプレイ。

この青い鷺を見つけたのは、たまたま、 Sr. Ledesma のバナナ園へ入っていく手前にある有機栽培水田の脇を走っていたら、七、八十羽程のシギとチドリの群が田んぼの上を舞っていたので、写真を撮るため車を止めました。そこには他にも様々な水鳥がおり、その中に Little Blue Heron の番がいたのです。紺色の鷺がいるとは聞いていましたが、見るのは初めてだったので、距離は遠過ぎたのですが、チャンスを逃がしてはいけないと夢中でシャッターを押し続けました。そんな訳ですので、私はこの鷺の生態については殆ど何も知りません。ガイド・ブックによれば、汽水域、特にマングローブ林が茂る砂州を主な棲息場所としているとあります。バナナ園へ行くにはいつもマングローブ地帯の上を小型機で飛び越えている私達の目に、この鷺が留まることがなかったのは当然のことだと思います。

いまから 35 年程前までは、文字通り湖沼地帯が今よりはるかに広く続き、コスタ地帯に点在する集落のはずれは殆どが沼でした。ですから町外れや道路からでさえ、今日ではもう図鑑でしか見ることの出来なくなった大型の水鳥を目にすることもできました。今でもハイ・ウェイから外れて数キロ奥に入ると、運がよければ、まだそれらの鳥を見ることが出来ると言われますが、砂利道を運転してもらってそんなに奥まで湖沼地帯に入ったことはありません。実際はどんな風になっているのか、どんな野鳥達がいるのか見てみたいといつも思っています。