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No.48 Caligo Idomeneus & Morpho Rhetenor(イドメネウスフクロウチョウとレテノールモルフォ)

Photo & Text:Motoaki Itoh

"Caligo Idomeneus(イドメネウスフクロウチョウ)と Morpho Rhetenor(レテノールモルフォ)"

Caligo Idomeneus(イドメネウスフクロウチョウ)

Caligo Idomeneus(イドメネウスフクロウチョウ)
このフクロウチョウは、私達の仲間で息子さんと一緒に捕虫網を振り回しながら、日本全国チョウチョを追い回していた人が、ちょうど前回掲載したようなポーズでバナナの幹に止まっていた蝶を素手で取ったものです。

前回はイドメネウスフクロウチョウ(俗称、ヴァキータ)のことを書きましたが、蝶の翅の表面の色は幾つかの私が所有している図鑑の写真では、標本を撮影したのではないかと思うほど、生きているときの、あのキラキラした輝きが写っていないので、ここに1992年の11月にエクアドールに同行して頂いたプロ・カメラマン、大都博之さんが撮った写真をUpします。フクロウチョウは裏翅の「目玉模様」だけでなく、表の翅の色も魅力的だと言うことがわかって頂けると思います。

モルフォ蝶と言う名前の由来ですが、初めてこの蝶を新世界で見たヨーロッパの人達は、そのメタリック・ブルーの輝きがあまりに美しく幻想的で、この世のものとは信じられない、ギリシャ神話の夢の神モルフェウスだけに許されたものだ、と言ったからだと伝えられています。

私が今までコスタ地区の農園内で見てきたモルフォ蝶はレテノールモルフォです。ただ、一度だけですが、Morpho Deidamiaを見たことがあります。今では、モルフォ蝶を見ることは少なくなっています。特定のサニート農園や有機バナナ農園、オリート農園で、周りに有機のカカオ農園が隣接するようなところでしか、ほとんど目にすることはありません。この蝶は飛翔力が強いため、そのテリトリーは広く、その中に化学農薬を散布する畑や農園、庭園があると、まず、その姿を見ることは有りません。


Morpho Rhetenor(レテノールモルフォ)

Morpho Rhetenor(レテノールモルフォ)
いつまで待ってもモルフォが羽を休めないので、捕虫網で捕まえ、写真に撮って貰いました。手だけの出演者は、蝶の手掴み名人です。

私は、上記のような条件を備えた農園を視察する時は、いつでもモルフォを探して、必死に車の中から周りを見ていますが、空振りに終わることが殆どです。二年前に、クレメンティーナ農園のよくカラカラを見る場所の傍に作られた、パイナップル畑に行ったとき、そこでモルフォが飛び回っているのに出くわしたことがあります。あのメタリック・ブルーをフィルムに収めることは出来ましたが、残念ながら、望遠レンズで撮ったためかピントが合っておらず、パイナップル畑の中に鮮やかに青い蝶が飛んでいるなあ、ということがわかる程度の写真でしかありませんでした。蝶に詳しい友人の説明では、多分、パイナップルの実を収穫した後の切り口から蜜(ネクター)が出ているので、それを吸いに広いクレメンティーナ農園の林の中に棲息しているモルフォが出てきたのではないかと言うことでした。

モルフォの雄は攻撃的と言うか、他の雄が飛び始めると、必ずと言ってよいほど姿を現します。また、面白いことは、陽光にキラキラ反射するメタリック・ブルーの塗装をした車で走り回っている時の方が、この蝶に会えるチャンスが高いようです。車の色と反射光に反応するのだと言われています。

今回、Upした写真二葉は前記の大都さんがSr. Orrantiaの有機栽培農園で撮ったものです。
グアヤキール旧家のオランティアさんは、80年代末には、ヨーロッパで既に始まっていた有機栽培農業に 強い関心を持ち、広大な農園で、牧畜、カカオ栽培、バナナ栽培、海老養殖など総ての事業を有機に変換するという、まさにエクアドールでの有機栽培先駆者として後進に道を拓いた人です。
しかし、当時は巨大な草であるバナナの葉を枯らす、シガトカ病に有効な自然物質から作る殺菌剤が無かったので(現在でも自然物質殺菌剤は化学物質のものよりも効果はかなり劣りますが)、後にシガトカ病が大発生した時、ついに 有機栽培は10年を経ずして頓挫していまいました。