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No.45  Ecuadorian Ground-Dove

Photo & Text:Motoaki Itoh

"Ecuadorian Ground-Dove(オオスズメバト)"

Ecuadorian Ground-Dove(オオスズメバト)

サニート、Sta.Monica農園。バナナの葉の上で、仲良く休んでいた夫婦バト。

この鳩はエクアドールで最も普通に見られる野鳩で、大都市の公園、家々の庭、農園のいたる所で目にします。羽の模様は、ソライロ・アルキバトに良く似ていますので、注意して観察しないと、間違いやすいのがちょっと問題です。遠くにいるとき、どっちかなあ、と思って農園関係者に訊くと、「セニョール、そんなこたあ、どっちでもいいじゃないですか。Paloma es Paloma(ハトはハトでしょう。)」と、単純明快な答えが返って来ます。「同じハトでも、いろんなハトがあるんだよ。」と、私が答えると、「へっへっへー。 それはそうですね。」と、変なことにこだわるハポネス(日本人)だなあ、といった顔をして向こうへ行ってしまうのがいつものことです。

この鳩の変種なのか、あるいは、独立した種なのか判らないのですが、羽の色や模様はそっくりで、嘴の形だけが明らかに異なる鳩がパイナップルの産地・Milagro地方のサニートや有機バナナ農園にいます。写真に撮ってありますが、どの図鑑で見ても見当たるものが有りません。ところが、不思議なことに、バナナ農園周りを仕事にしている、Inspectorや農園関係者達は、このハトを別の独立した名前で呼んでいるのです。写真を撮ることが出来て、事務所でこのハトのことを教えてくれた人に会った時、「Milagroの農園で見たかい。」と、訊かれたので、「あれは、ハトじゃないか。」と、私が言うと、「同じハトでも、あのハトは違うんだよなあ。あれは食べたら美味いといって、あの地方の人達にとっては、特別なハトなんだよ。」と説明してくれ、私の顔を見て、「いつもとは、逆の会話になっているね。」と言って、大笑いをしました。 

Ecuadorian Ground-Dove(オオスズメバト)

サニート、San Marcos農園。堆肥を作るために積まれた、バナナの房を切り取った後の芯(西、Tallo)にとまって小雨に濡れていたハト。

この鳩は、たしかにコスタ地帯では、どこへ行っても目にしますが、どうもペルーとの国境に近いEl Oro州、Machala地区のサニート農園でもっとも頻繁に、というよりも、いつ行っても見ることができるので、その辺りの棲息密度が高いのかなあと思います。ペルーの野鳥ガイド・ブックにも、このハトがEcuadorian Ground-Doveとして載っており、北はコロンビア南部海岸地帯から南はペルー北部に至る地域で棲息しているようです。エクアドールとペルーは、度々、戦争を繰り返して来たので、数年前までは国境監視の厳しい状態が続いていました。しかし、そんなことは人間集団内の問題で、野鳥にとっては何の関係もありませんから、ペルーにEcuadorian Ground-Doveが棲みつき、エクアドールにPeruvian Meadow-Larkがいる、そして自然界ではそれが当然だということが、私は大変気に入っています。