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No.44  Galapagos Dove

Photo & Text:Motoaki Itoh

"Galapagos Dove(ガラパゴス・バト)"

Galapagos Dove(ガラパゴス・バト)

Los Gemelos(ロス・ヘメーロス)の深い穴に観光客が  落ちないようにと設けられた柵の上で人間を見ていたガラパゴス・バト。

この鳩の特徴は、眼の周りのEye Ringが鮮やかなブルーと言う点だと思います。勿論、ガラパゴスに棲息する殆ど総ての生き物に共通の、人間を警戒しても恐れてはいないという習性を持ち合わせていますので、撮影者がこの鳥の1メートル位そばまで近づくのも格別難しいことではありません。ですから当然、このブルーのEye Ringははっきり撮れますし、ワイド・レンズでこの鳩を含めて、殆どの野鳥がフィルムいっぱいに撮れるという、他の地球上で人間が生活し、あるいは頻繁に訪れる場所では、想像もつかないような事が可能なのです。実際に、カメラ持参の観光客は、多分3分の2位の人達は、一眼レフを手にしてはいませんが、皆さん西洋人、東洋人を問わず、この鳩の美しさに惹かれて、チョコチョコと歩き回る鳩の後を追っかけ回して夢中でシャッターを切っています。一見、日本で見慣れたキジバトの羽の色をもっと濃くして派手にしたような感じです。餌を探しながら歩いているところは、本当にキジバトそっくりです。

この鳩は、ガラパゴス観光の中心地Santa Cruz島では、観光客がよく案内されるLos Gemelos(ロス・ヘメーロス)と呼ばれる、溶岩流地下道の陥没によって作られた直径80メートル、深さ約50メートル程の巨大な円形をした穴(ピット・クレーター)の周囲、そして、世界的にもゾウガメの研究・人工増殖で良く知られた、ダーウィン研究所の敷地の中などで頻繁に目にすることが出来ます。

Galapagos Dove(ガラパゴス・バト)

ダーウィン研究所の敷地の中で、餌を探し回っているところ。

ガラパゴス諸島には、猛禽ガラパゴス・ノスリが棲息していますが、Santa Cruz島など人間の居住する島では、家禽などを獲るという理由で、過去にかなり殺されたためその数は極端に少なく、同島では絶滅危惧種になっていますが、このことも、これらの島でガラパゴス鳩が多く見られる原因かと思われます。また、犬を持ち込む人々は多いのですが(もちろんこれは許可制ですが)、猫はあまり持ち込めないので、野良猫が非常に少ないことも、この鳩が多いもう一つの理由ではないかと思います。野良猫が上手に野鳥や蛇を捕ることは良く知られていますから。しかし、別な観点からすると、過酷な試練を乗り越えた鳩類がより優秀な子孫を増やすことは、進化論的な表現で言う、適者生存ということでしょう。とすると、人間に駆逐されて、ノスリが殆どいなくなり、その他の天敵、鳩のようなサイズの鳥を獲る蛇も、野良猫もいないSanta Cruz島で棲息しているガラパゴス・バトは生態系上はどういう状態にいるのでしょうか。あるいは、皮肉な見方をすると、人間という最強の捕食者が増え続けるという、ここ数十年にガラパゴス諸島の幾つかの島で起きている急激な変化の下で、その変化に適応して生き延び、生息数を増やすというのも、広い意味で、進化論に適った現象なのでしょう。