Dafune島を背景にNorth Seimore島で一休みしていたペリカン。
世界のどんな地域に棲息する動物も、茶の間に座ってテレビのスクリーンで見ることができる今の時代と違って、私がこの鳥を初めて肉眼で見た当時は、まだ野鳥のドキュメンタリー番組というものがあまりありませんでした。ペリカンはマンガや絵本、図鑑、映画ではよく目にしていましたが、自然の中で、生きているのを見たのは1963年、エクアドールの乾季でも一番気温が低い八月、サリーナスという海辺の町にあるリゾート・ホテルで昼食をとっているときでした。何気なく目を上げると、波打ち際4,5メートル位の高さのところを、10羽ほどの大きな鳥が列を作って、ゆっくりと、ほんとにゆっくりと飛んで来ました。それまで、本や映画で見ていたペリカンは、のど袋を魚で一杯にして膨らませた立ち姿のものばかりでしたので、目の前を列を成してゆっくり飛んで行く大きな野鳥がペリカンだと気が付くのには、すこし時間がかかりました。背景が、海水浴客が一人もいないひっそりとした広い海辺と、エクアドールの乾季特有のひんやりとした曇り空だっただけに、飛んで行くペリカンは、優雅だけれど、なにか寂しげな印象だけが強く残りました。
若鳥。足元にいる蟹を食べることはありません
ペリカンはバナナ園にはやって来ません。しかし、バナナを船積みする港では、今でも、ボラが多いのですが、魚を獲るために水中にダイブしているのをいつでも見ることが出来ます。
ペリカンは頭の良い鳥で、ガラパゴスでは人間の生活の中に上手に入り込んで、人間中心の環境に適応しているものも数多く見られます。例えば、土地の漁師にしか与えられない漁業権(Fishing Licence)を得て、一本釣りや刺し網漁をしている漁船の周りにまとわり付いておこぼれにありつこうとしている何羽ものペリカンを見るのは、もう珍しいことではありません。ただし一方では、人間の生活とは係り合いを持たず野性のままで生きているペリカンが多いのは言うまでもありません。