Clementina(クレメンティーナ)農園でバナナの脇にあるトウモロコシ畑にいた Turkey Vulture
今回のTurkey Vultureについて書く前に、前回のRoadside Hawkのところで、俗称「Gavilan Pollero(直訳:雛捕り鷹)」と言う 鷹が学問的には何と言うのかわかりません、と書きましたが、昨日やっと判明しました。 現在、エクアドールで自然と野鳥を撮影しているTVクルーに同国の野鳥学者が同行しており、そ の先生に、「Gavilan Polleroと呼ばれているのは、何と言う鷹のことでしょう か。」と聞いてもらったところ、「一般的には、Roadside Hawkのことです。」と教 えていただきました。飛んでいる姿と、止まっている姿が、私の意識の中で一致していなかったの です。
さて、このTurkey Vultureですが、和名はヒメ・コンドルといいます。本物のコンドルと較べると体はかなり小さいものの、姿形は良く似ていていますが、エクアドールでは、けっしてこの鳥をコンドルとは呼びません。彼らにとってコンドルとは、アンデスの雪山を背に高原を飛翔する、あの巨大で神聖な鳥、「コンドル」しか居ないのです。Black Vultureも、このTurkey Vultureも、あの、私たちの目には威厳に満ちたKing Vulture(トキイロ・コンドル)でさえみんな、Gallinazo Negro,Gallinazo Aura,Gallinazo Rey、と呼ばれ、単なるGallinazoでしかないのです。Gallinazoとは、巨大な雄鶏とでもいう意味合いから出たものと思われ、その響きには、「コンドル」と口にする時の様な一種独特な畏敬の響きはありません。
雨季、Clementina(クレメンティーナ)農園の南に広がる水田が水没して出来た、巨大な沼の岸辺に群れていたTurkey Vulture。エクアドールの雨季、つまり北半球の冬の季節には、居つきの鳥の他に、北から渡って来るものが多いので、この鳥の数が増えるとGuide Bookには説明されています。
現在、野生のコンドルは、50〜80羽しかエクアドールの空を飛んでいないと言われています。私の40年を越すエクアドールとの行き来の間でも、野生のコンドルが飛んでいるのを見たのは、10回程でしかありません。11年前、若手のプロカメラマンの方にエクアドールに同行してもらって写真を撮りながら、バナナ産地、ガラパゴス諸島を廻ってアンデス高原に入り、首都のキートから北に向かっていた朝、前日からの雲が吹き払われ、氷河に覆われた5800メートルを越える3つの山がくっきりと見えていました。そのカメラマンが人物を主に撮ってきた人だったので、「高山の天気は激変しますので、今のうちに、あのCayambeやAntisana峰を撮っておいてください」とお願いして、私はヴィデオ・カメラを回し始めました。そのとき、スクリーンに黒い点がぽつっと現れ、それが見る見る大きくなって来たので、はっとして、ズームをテレいっぱいにしてその物体を凝視すると、なんと、あのコンドルが上昇気流に乗ってこちらにやって来ていたのです。「コンドルだ。コンドルが飛んで来た。」と、大声で叫んでヴィデオを回し続けました。でも、カメラマンと他の同行者たちは、くっきりと見えていたCayambe山を夢中で撮り続けていたのです。コンドルは、私たちの頭上で2回旋回した後、風に乗ってすごいスピードで飛び去って行きました。「コンドル、撮れましたか。」と、聞くと、「山を撮ってから撮ろうと思っていたのでまだですが、何処にいます」と、聞き返されました。私は、愕然として、「せっかくのチャンスだったのに。」と、少し強い声で責めるように言ったようです。「伊藤さん、だって、コンドルが飛んで行くと言う歌があるんで、コンドルはいつでも見れるものだと思っていたんですよ。あっ、そうか、残念だったなあ。」と、言われました。
参考までに、私が天空を仰いで回した、ヴィデオ・テープに映っていたコンドルの映像は、ひどい手ブレで、コンドルだと認識できるのはほんの数秒だけでした。手振れ防止付きのヴィデオ・カメラを帰国後すぐに購入したのは言うまでもありません。