バナナ園の野鳥と生き物 = バックナンバー =


No.38  Avispa

Photo & Text:Motoaki Itoh

番外編"Avispa(西語:アヴィスパ 英語:Wasp)"

Avispa(西語:アヴィスパ 英語:Wasp)

スズメバチのような、バナナ園の中でも、大型の蜂。

前回のマミジロ・ミツドリのところで、バナナの花の受粉を助けるものとして蜂と蝶がいると書きました。蝶は殆どの種が受粉を結果的に助けますが、蜂の場合は、蜜を吸って受粉を手助けするものと、バナナの葉を食べる所謂イモムシ、つまり蛾や蝶の幼虫を食べることで、バナナの成長を助け、結果的に農園主に感謝されているものとに分けられます。

エクアドールのバナナ園には、非常に多くの蜂の種類がいます。私共のバナナ栽培技術部門の中で、いま世界的に注目を集めている、天敵を利用して、害虫とひとまとめに言われている人間が作る農作物の生産性を低下させる昆虫類を、コントロールする研究に携わっている昆虫学博士の説明によれば、大きいのはスズメバチ、アシナガバチから小さいのは、0.3ミリという、顕微鏡サイズの蜂まで実にさまざまな蜂類が生息しているそうです。ちなみに、日本の役所言葉では、害虫を駆除する天敵の昆虫を「昆虫農薬」と呼ぶのだそうです。個人的には違和感を持つネーミングです。


Avispa(西語:アヴィスパ 英語:Wasp)

若い女王蜂が独立して、新しい巣を作るため、一団を引き連れてベストな巣作りの場所を求めて旅に出た途中、サニートバナナ園の中で一休み。

今回、意図的にAvispaという、スペイン語を表題にしたのは、エクアドールでは、蜂蜜が取れるミツバチだけがAbeja(アベーハ)と呼ばれ、その他はスズメバチも、アシナガバチも、アブまでがアヴィスパと一緒くたに呼ばれているからです。ここに載せた、2枚の写真は、どちらもアヴィスパのもので、それぞれ、種類は異なります。もちろん、バナナ園の中には野生のミツバチの巣も見つかりますし、写真に撮った物もあります。ただ、そのミツバチが南米固有のミツバチなのか、Killer Beeと呼ばれる、アフリカ原産の凶暴なミツバチなのかは、私は専門家ではないのでわかりません。

昆虫農薬として使う0.3ミリのハチは、Trichogrammaと呼ばれます。このハチに同じように小さなSitotlogaと呼ばれるハチの卵を与え、これに、Trichogrammaの卵を産み付けさせ、十五万個位の微小な卵をバナナ園の中に置いておきます。時間が経ち、寄生していたTrichogrammaの幼虫がかえり、Sitotlogaの卵を食べて成虫になったものが、バナナ園の中を飛び回り、他の害虫の卵にまた卵を産み付けるのです。そのような過程を繰り返して、害虫を駆除しようと言うのです。この昆虫農薬は、害虫の発生が異常に多くないときには上手く機能しますが、十年、或いは、二十年にいっぺん起きるような、異常発生の時には、思うような効果は得られないそうです。

スズメバチやアシナガバチの仲間は、イモムシを食べるので、農園主は非常に大事にします。中には、ハチを殺した者には罰金を科す者も居ます。金額は安いものですが、ハチの嫌いな農園労働者たちはぼやきっぱなしです。そのうち、ハチの存在にも慣れるそうですが。