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No.35  Wattled Jacana

Photo & Text:Motoaki Itoh

"Wattled Jacana(ナンベイレンカク)"

Wattled Jacana(ナンベイレンカク)

クレメンティーナ農園の前に雨季になると出現する、大きな沼の淵の水草の上を歩き回っていたレンカク。

エクアドールのラ・コスタ地域では、クリスマスから翌年の 4 月いっぱいまでが雨季で、大雨が続いた後には、ハイウェイ沿いに忽然と広大な湖沼地帯が出現します。水が少しでも引けば水田になるような所ですから、その一見大きな湖のように見える所も、水深はせいぜい50センチから1メートルです。田んぼの中の小高い所に立てられた農家は、その中に孤立しますので、 どこへ行くにも4,5メートルの丸木舟に乗って、竹の棹で水底を突きながら、盛り土をして固めた道まで移動するしかありません。



Wattled Jacana(ナンベイレンカク)

ユキコサギの所で紹介した、Sr.Ledesmaの有機栽培水田に群れていたレンカクの成鳥と幼鳥、そして2羽のユキコサギ。

この季節は、水草やそこに棲む生物を食べる水鳥たちにとっては天国です。このナンベイレンカクも、そこここで、岸辺の水草の上を歩いているのが見られるようになります。第二次世界大戦頃まではまだ沢山いたと言われる、クロコダイル、カイマンなどの鰐も、その後のワニ皮を求めての乱獲によって、いまではその姿を消してしまい、 またボアなどの大型蛇もめっきり少なくなってしまいましたし、小型の水鳥を飲み込むといったナマズも今では昔話になってしまったので、 レンカクにとっての天敵は、人間しかいなくなってしまいました。レンカクの肉がおいしいと言う話を聞いた事もありませんので、貧しい農家の人達がこの鳥に向かって高価な散弾銃を撃つこともありません。その為か、レンカクは増えているように思えます。しかし、レンカクにとっての生育環境が全く変わってしまった今でも、多分、遥か昔に遺伝子の中に組み込まれたものに拠るのか、この鳥は非常に神経質で、 ちょっとした気配にもすぐに飛び立ち、そのたびに風切羽の翼下面の鮮やかな黄色が目に飛び込んできます。飛んでいる姿は、写真心をとても刺激するのですが、飛翔距離が短く、4メートルからせいぜい20メートル位なので、なかなかシャッターをタイミング良く切れません。