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No.30  Woodpecker Finch & Medium Ground Finch

Photo & Text:Motoaki Itoh

Woodpecker Finch(キツツキ・フィンチ) と MediumGround Finch(ガラパゴス・フインチ)"

Woodpecker Finch(キツツキ・フィンチ)

キツツキ・フィンチが枝の中から幼虫を追い出して、舌を伸ばして取ろうとしている瞬間。

前回、ダーウイン・フィンチの説明のところで、13種のフィンチは、進化の過程で嘴の形だけでなく、生態もそれぞれ固有の生き方を身に着けてきたと書きましたが、その環境に適応する能力は、単に鳥好きを驚かせるだけでなく、鳥類学者をも驚嘆させるほどのようです。

サボテンの棘や小枝を折って、嘴でくわえて、それを自分で開けた木の穴に差込み、中の幼虫を追い出して食べるキツツキ・フィンチ、アオアシ・カツオドリの尾羽の付け根にある血管を突付いて、傷つけ、その血を吸うフィンチのことは、皆様もテレビやヴィデオの映像でご覧になったことがあると思います。先日、テレビでNational Geographicチャンネルを見ていたら、フィンチがMasked Booby(アオツラ・カツオドリ)の卵を、後ろ向きになって羽をばたつかせながら、足で地面に作られた巣から移動させ、下の石の上に落として割り、皆で食べているシーンを見ました。


Medium Ground Finch(ガラパゴス・フインチ)

隣のテーブルに私たち日本人の観光客が5人も居て、一人は白い望遠レンズを覗いて写真を撮ろうとしているのにも、さして気に留めず、皿に残されたばかりのスパゲッティをつっつくフィンチ。

ガラパゴス諸島の多くは、火山島や海底から隆起した岩山で、未だ若い島には草木があまり無く、フィンチの餌も不足するので、苛酷な環境の下で生存する為には、異常なまでにその適応力を磨かなければならないのでしょう。

ただし、人間が植民して来てからは様々な草木を持ち込んだので、楽が出来る種も当然あると思います。

人間、とくに観光客が増えてからは、一部のフィンチは食堂に飛んできて、食べ残しのお裾分けに預かることを覚えてしまったものが多いのも、適応力のなせる業かと、複雑な気持ちで眺めています。この写真に有る様に、あるときはスパゲッティ、パン、リゾット、ソーセージ、ビールのつまみのピーナッツ、スナック菓子、などなどです。

ガラパゴスでは野鳥が人間を恐れませんので、2メートル位しか離れていない隣のテーブルに、まだ食べ続けている人間が何人も居るのにもかかわらず、ちょっと警戒する素振りを見せるだけで、2羽、3羽とフィンチ達が次々に飛んできて、順番を争って食べて行きます。最初にこの光景に接した時は、まさに、カルチャー・ショックでした。神社、仏閣の鳩以外、野鳥は人間を恐れるものと決め込んでいた私にとって、人間と野生、あるいは自然との共存・共生を考えさせられた、楽しく意義の深い経験でした。