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No.26 White-Tailed Hillster(ルリムネ・ハチドリ)

Photo & Text:Motoaki Itoh

White-Tailed Hillster(ルリムネ・ハチドリ)

White-Tailed Hillster(ルリムネ・ハチドリ)

蘭園の質素な事務所に戻った我々を興味深げに見に来たハチドリ。

私はこのハチドリを、いままで40年間エクアドールに出張していて、たった一度しか見ていません。勿論、これだけ長い間エクアドールと日本の間を行き来していても、ほとんどいつも同じ地方、100軒ほどのバナナ農園、それが有機農法を行っているかサニート農法を行っているのかは別にして、そのうちの15軒位を順番に回り、その他はオリート・バナナ農園。そしてアンデス高原と言っても、主に観光地、日本で言えば京都、奈良、鎌倉、日光と言ったところですが、それとガラパゴス諸島の4つぐらいの島などを繰り返し訪れているだけで、氷河を戴く5500から6000メートル級の高山は裾野を歩いたぐらいですし、まして広いアマゾン地帯は、その源流部のほんの一部しか知りませんので、エクアドールにいるハチドリの大部分は目にしていないと言ったほうが良いのですが。

ハチドリといえばその大部分が緑色かそれにコバルト・ブルーが混じった光り輝く羽に覆われたものがほとんどで、この鳥のような色のハチドリを、キトーから3000メートルの峠を越えて太平洋岸に向かってハイウエーを下った中腹、海抜1700メートルの所にある蘭園で見たときは驚きが先に来て、しばらくボヤッとしており、レンズを構えるのを忘れていたほどです。幸い、このハチドリはそれまであまり人間にいじめられていなかったのか、3メートルほどの所まで来て私たちを観察していましたので、4回シャッターを切ることが出来ました。


ブロメリア

蘭園のなかで咲いていたブロメリア。この花に来ていたハチドリがこのルリムネ・ハチドリではなかったかと思います。

この鳥がなんと言う鳥なのか調べたのですが、なかなか見つからず、やっと、A Filed Guide to the Birds of Peruの中で、この写真に良く似たハチドリを見つけることができました。この図鑑のなかのイラストレーションとは似ているのですが、「これだっ。」と言う絶対的確信は未だ持てません。ハチドリは、谷ひとつ越えても、少しずつ違っているように思われます。つまり変種、亜種が花の蘭や魚のメダカのように多いのではないかと、素人判断しています。また、エクアドール・アンデスの西斜面は急峻で、海抜0メートルから東西100キロメートルぐらいの水平距離で、4000メートル、或いは、チンボラソ山のように6300メートル迄も一気にせり上がっています。ですから、700メートルから1800メートル位までは雲霧林に覆われた文字通りのジャングルで、街道沿い以外はほとんど手付かずの原生林です。生物学的には、まださまざまな珍しい、植物が見つかる可能性があるのではないかと思います。