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No.191 Masked-water Tyrant

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、"Masked-water Tyrant (和名:マダラタイランチョウ 学名:Fluvicola nengeta)

Masked-water Tyrant (和名:マダラタイランチョウ 学名:Fluvicola nengeta)

サニート農園で、一生懸命自分のテリトリーを主張するデモンストレィションをしていた雄。このバナナの脇に彼は巣を作っていました。堆肥を自分で作る農園が増えているのも、この鳥を再び多く見ることが出来るようになった一つの理由かもしれません。

このコラムも、一般的な表現で、諸般の事情により今回と次回で終了することになりました。あと2回、どの野鳥にするか色々考えましたが、終わりから2回目(西語:penultima)はバナナ園の野鳥で、最後(西語:ultima)はアンデス西山麓の野鳥にすることに決めました。La Costa(海岸地帯)にある自然保護区”El Cerro Blanco”で撮った野鳥の中でもRegion Tumbesiana(トゥンベス地方)のいくつかの固有種や、ここ2年間でかなりのめり込んでしまったハチドリの写真の中にも、未だ載せたいものがたくさんあって選択に迷いました。今回は第1回に取り上げた鳥ですが、Masked-water Tyrant(マダラタイランチョウ)、そして最後はTurquoise Jay (ジュズカケアオカケス)で締め括ることにします。

最初は、あと2回でなく3回コラムを書こうかなぁ、とも思っていたので、バナナ園内で撮影した野鳥の中で今まで取り上げて来なかった鳥にしようか、あるいは10年程前まではGuayaquil(グァヤキール)市の西方に広がるRegion Tumbesiana特有の乾燥地帯に作られた有機栽培マンゴー農園の周りではちょいちょい目にした、今でもEl Cerro Blancoへ行けばかなりの確率で見られるものの、同地方の中でも限定された地域にしか棲息していない固有種White-tailed Jay(オジロルリサンジャク)を取り上げようか、などと考えたのですが、結局あと2回、上記2種の野鳥の掲載で終えることにしました。

バナナ園内の鳥の候補として頭に浮かんだのは、バナナ産地の中心Quevedo (ケヴェド)周辺の減農薬農園や オージョスさんのサニート農園で撮ったアトリ科のYellow-bellied Seedeater(キバラヒメウソ)にするか、やはりアトリ科の鳥で、La Mana地区のオリート農園内で撮ったOrange-billed Sparrow(アカハシシズカシトド)にするか迷いました。アカハシシズカシトドをオリート農園で見ることはあまりないし(しかしもっと北には多いようです)、嘴の赤い色が独特で、これにしたかったのですが、なにせ証拠写真にしかならないような出来栄えなので、これはボツにして、結局バナナ園の野鳥の掲載は、最近La Costa(海岸地帯)で頻繁に目にするようになったマダラタイランチョウを再び取り上げることにしました。

Masked-water Tyrant (和名:マダラタイランチョウ 学名:Fluvicola nengeta)

まさに、”Tyrant(圧制者)”と言うその名前の由来どおり、気性の激しさが垣間見られるポーズです。

このマダラタイランチョウは、不思議なことに、大西洋に面したブラジル東部と太平洋に接したエクァドールの海岸地帯、そしてペルー沿岸の北部、それもエクァドールとの国境近くにしか生息していないと、どの野鳥解説書にも書かれています。二箇所の生息域が南米大陸の東の端と西の端に存在しているというのは、その間に広大なアマゾンとアンデス山脈が存在している事実を考えると、とても興味深いものがあります。私がいつも参考にしているガイド・ブック”The Birds of Ecuador”には、2つの地域に棲むマダラタイランチョウは、互いに非常に良く似ているものの、2つの亜種ではないかという学説があると書かれています。エクァドールでこの鳥を見るには、バナナ園、その中に堆肥圃場を持ち、自分達で堆肥を作っている有機栽培農園やサニート農園(特別栽培)あるいは大部分のオリート農園へ行けば、まず間違いなくこの鳥に会えます。この鳥は昆虫、小魚を含む小型の水棲動物を餌にしますので、堆肥場や養魚場、水辺、ホテルのプール脇などにも現れます。バナナ関係者でない一般のバーダーの方がバナナ農園に入る事は難しいので、ツァーでアンデス西山麓へ行かれる方は、Mindo(海抜1400メートル)よりもまだ低い、海抜700メートル以下の所にある鳥見スポットを訪れたときに、目にすると思います。グァヤキール周辺では、市の西18Km程の所にある貯水湖”Represa de Chongon”の岸辺の公園に行けば、間違いなくこのマダラタイランチョウが、まるでセキレイのように尾を上下に振りながら歩いているのを見るでしょう。