バナナ園の野鳥と生き物 = バックナンバー =


No.190 Long-billed Starthroat

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、"Long-billed Starthroat (和名:ハシナガハチドリ 学名:Heliomaster longirostris) &
Bananaquit (和名:マミジロミツドリ 学名:Coereba flaveola)

Long-billed Starthroat (和名:ハシナガハチドリ 学名:Heliomaster longirostris)

正面から撮れていれば、咽喉の下の赤い羽根の色が出ていた筈なのですが、この角度では黒っぽくしか映りません。

今回からまたバナナ園の野鳥に戻って来ましたが、その写真がバナナ園内で撮ったのだと一目瞭然で分かるものを探し、出来ることなら今まで載せたことのなかった野鳥を、と選んだらこのLong-billed Starthroat (ハシナガハチドリ)になりました。このコラムを続けるのもあと何回かになりましたので、エクァドールのバナナ産地には、生態系の豊かなバナナ園も結構あることが納得していただけるような写真をこれまでも載せたつもりなのですが、今回もその趣旨の写真を選びました。

今までにも何回か書いてきましたが、こうした私共のバナナの良い点を、現地まで出張していただき、その目で実際に確認していただいたスーパーや生協のバイヤーの方々と、商品作り、イメージ作りをして来ました。確かに、そのような農園には野鳥も沢山います。しかし、大規模単一作物栽培のバナナ園に適応出来た野鳥の種は、バナナ農園が経営されている地域、La Costa(海岸地帯)に本来棲息していた数百の種と比較すると、残念ながら僅かなものです。多くの種は自然保護区“El Cerro Blanco”や“Churute”などのLa Costa固有の自然環境が残っている、あるいは、失われた環境を再度蘇らせようと努力している人々が再生している保護地域に行ってしまったのが現実です。そんな訳で今まで掲載していないバナナ園にいる野鳥種の写真で、そこそこ見られるものは残り少なくなりました。もちろん、バナナ園に適応した野鳥種、例えばVermillion Flycatcher (ベニタイランチョウ)、Masked-water Tyrant(マダラタイランチョウ)、Social Flycatcher(アカボウシヒタキモドキ)、Pacific Hornero(ニッケイカマドドリ)、 Green Kingfisher(ミドリヤマセミ)、Blue-gray Tanager(ソライロフウキンチョウ)、Scrub Blackbird(ヤブクロムクドリモドキ)、Variable Seedeater(カワリヒメウソ)などの写真はまだまだ十数枚ものDVDに焼き付けてありますが。

このメキシコ南部からボリヴィアに至る広い地域に棲息するハシナガハチドリが、バナナ園で見られると分かったのは去年のことでした。ハチドリは体も小さいし、子育ての時期を除いては、花の蜜に依存して生きているので、慣行栽培農園がほとんどのLa Costaでは、たとえ減農薬栽培(特別栽培)をしているバナナ園であっても、Rufous-tailed Hummingbird(ハイバラエメラルドハチドリ)や地域的にもトゥンベス地方の固有種であるAmazilia Hummingbird(チャムネエメラルドハチドリ)ぐらいしか目にすることがないと思っていましたから、減農薬や有機栽培バナナ園の割合が高いEl Oro州北部のTenguel(テンゲル)地区で農園脇の電線に止まっているハシナガハチドリを見たときは、正直嬉しかったのと驚いたのが半々でした。ところがその4日後に、La Mana地区にある、ナマケモノやバシリスク・トカゲを撮影したSr. Freddy Hoyos(フレディ・オージョスさん)のサニート・バナナ農園で再びハシナガハチドリを見たときは、嬉しかっただけで、驚きの気持ちはもうありませんでした。人間の欲は際限ないもので、最初に見たときは、何とか証拠写真でも取れれば良いと謙虚に思ってシャッターを切っていたのですが、二度目には、鳥が高い電線に止まっているので、下から仰ぎ見ることになったため、空に引かれて適正露出が私には合わせられず、なおかつ、ハチドリがバナナの葉からは離れていたので、「もっと葉っぱの傍へ寄ってくれ。」とか、「もっと下へ。目線の高さまで降りて来てくれないと、咽喉下の赤い色が撮れないじゃないか。」とか、勝手なことを周りに日本語の分かる人間がいないことを幸い、ぼやきながら写真を撮り続けました。ハシナガハチドリは少し移動して、バナナの葉っぱの傍までは来てくれたのですが、電線から降りてくることはありませんでした。

Bananaquit (和名:マミジロミツドリ 学名:Coereba flaveola)

バナナの花の蜜を吸いにやって来たマミジロミツドリ。ハチドリよりもちょっと大きいかなぁ、といった程度の体型です。

2枚目の写真は、上記のTenguelから10キロメートルほど北のBalao Chico(バラオ・チコ)にある、BonitaやEnanoブランドの慣行栽培バナナを作っている農園で撮ったものです。以前の農園所有者がここの他に有機栽培バナナ園も営農していた関係で、この農園でも化学物質の使用を極力抑えていたため、多種の野鳥を見ることができます。マミジロミツドリという命名はこの鳥の身体的特徴を良く捉えているなあ、とは思うのですが、Bananaquitという英語名はこの鳥の生態学的特徴を上手く表現していると思います。この野鳥は概して人間をあまり怖がらないので、写真はかなり撮りやすいです。マミジロミツドリはMindo-Nambillo地区のTandayapa Valleyよりも低い所ではハチドリ用のフィーダーによくやって来るので、そこでも撮影しますが、その地域で見るBananaquitの腹部は、La Costa低地のバナナ園で撮影したものと比較すると、僅かに赤っぽいような気がします。