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No.189 Tourmaline Sunangel

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、"Tourmaline Sunangel (和名:トルマリンテンシハチドリ 学名:Heliangelus exortis)

Tourmaline Sunangel (和名:トルマリンテンシハチドリ 学名:Heliangelus exortis)

Guango Lodgeの庭園で、後ろで順番を待っているバーダー・グループを気にしながらですが、正面からシャッターが切れました。ピンクの部分が前回掲載のビロードテンシハチドリのものとは違っているでしょ。

今回扱うトルマリンテンシハチドリは、エクァドールに棲息するSunangel(テンシハチドリ)5種の内で、前回のビロードテンシハチドリとともにトルマリンは東に、ビロードは西に、と互いに棲み分けたような形でアンデス山麓北部に棲息しています。他の3種は、エクァドール・アンデスの南部からペルー・アンデスの北部で見られます。他にもペルー・アンデスに棲息する4種のテンシハチドリのうち2種が、前にも触れました両国間の国境紛争があった地、“Cordillera del Condor(コンドル山脈)”の西側、つまりエクァドール側にも棲んでいるとの報告があるそうですが、その地域は未だ戦闘の後片付けが100%出来ている訳ではないので、普通の人間が今訪問するのは難しい所だと聞いています。

トルマリンとビロードの2種を比較すると、雄の場合、トルマリンはビロードと違って咽喉のピンクの下に白い線のような部分はありません。また、この雌の咽喉下には他のテンシハチドリの雌と違って、小さいピンクや茶色の部分もなく、写真のように真っ白な羽毛が生えています。このトルマリンテンシハチドリを見るには、首都キートの東にある海抜4000メートルのPapallacta峠を越えて、アマゾンの源流部を東に向かうハイウェイ沿いの海抜2700メートルに作られた“Guango Lodge”に寄るのが良いと思います。このLodgeは交通の便が非常に良い反面、その利便さがじっくり落ち着いて野鳥の写真を撮りたいバーダーにとってはマイナスになることもあります。エクァドールへバード・ウォッチングを目的として訪れる欧米のツァー客で、個人、家族単位で行動する人達を別にすると、グループ構成人数が多い団体はキートのホテルに宿泊し、中型バスで西山麓のMindo-Nambillo地区の名が通ったバーディング・スポット、Mindo、Tandayapa、 Milpe、Mindo Loma、 Yanacochaなどを回っています。東山麓とアマゾンへ向かうバーダーは小グループも20人程の大グループも、大体前夜はキートのホテルに泊まり、早朝東へ向かって出立します。そんな訳で、Papallacta峠周辺のパラモ地帯で鳥見をしてからGuango Lodgeに来る人たちを別にすると、ほとんどのバーダーが同じような時刻にこのLodgeに到着するのです。結果として、美しいけれどもあまり広くないこのLodgeの庭園にバーダーが集中し、お目当ての野鳥を観察したり撮ったりするのは、お互いに譲り合いながらすることになります。その点に関しては、各グループに付き添っている現地のガイドさん達が、お互い顔見知りなので、公平に時間と場所を割り振りし合っています。「俺が、私が、、」といった自己中が多いラテンアメリカ人一般に較べると、欧米で生活して来て、知的レベルも高く、マナーも良いエクァドールの野鳥ガイドさん達には感心します。マナーが良いのはガラパゴス観光の国家試験を通ったガイドさん達も同じです。ただ、我々日本人バーダーは、総じてじっくり写真を撮りたい人間が多いので、そのためには訪問時間をずらすか、皆が隣接する川原へ通じるフィールドへ降りて行くか、アマゾン方面の次の訪問地へ出発していなくなるまで待つしかありません。問題は、そのときに撮りたい野鳥が未だそこにいるかどうかです。

Tourmaline Sunangel (和名:トルマリンテンシハチドリ 学名:Heliangelus exortis)

同じ庭園で。雌の場合はカラフルな雄と違って、バーダーが群がっていなかったので、落ち着いて写真が撮れました。この種の雄と較べると地味ですが、雌も緑色が美しいハチドリだと思うのですが。

前にこのLodgeについて書いたときには忘れていたのですが、不思議なことにアンデス西山麓では3400メートルのYanacohaへ行かないと見られないSward-billed Hummingbird(ヤリハシハチドリ)が、東山麓ではここ海抜2700メートルのGuango Lodgeの庭にやって来ます。エクァドールへ行ってヤリハシハチドリは見たいが、「酸素の薄い高地を歩くのは自信がない」という方は、Guango Lodge訪問まで我慢すれば、息苦しい思いをして3キロ強のYanacochaの山道を歩くこともなくこの特異なハチドリを見ることが出来ます。ただ、Yanacocha保護区にはヤリハシハチドリだけではなく、他にも何種かのアンデス西山麓高地に固有な野鳥も棲息していますので、少々の息苦しさは問題ないという方々は、海抜3500メートルの鳥見に挑戦してみて下さい。