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No.187 Great-sapphirewing

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、"Great-sapphirewing (和名:ルリバネハチドリ 学名:Pterophanes cyanopterus)"です。

Great-sapphirewing (和名:ルリバネハチドリ 学名:Pterophanes cyanopterus)

Yanacocha保護区で道端に咲いていたホクシャの花の蜜を吸っていたルリバネハチドリ。

今回のハチドリ、Great-sapphirewingは小柄な鳥がほとんどのハチドリ達の中では、大柄な鳥です。つまり他のハチドリは体長7センチ位のものから11.5センチ位迄のものが多い中で、体長は平均15.5センチ程もあります。尾が非常に長い鳥、Black-tailed Trainbearer(ミドリフタオハチドリ)や、 Long-tailed Sylph(アオフタオハチドリ)、 Violet-tailed Sylph(ムラサキフタオハチドリ)などにしても、その長い尾羽を除くとその体長は平均的なハチドリのものとほとんど変わりがありません。ルリバネハチドリは、コロンビア北部からボリヴィア西部に至るアンデスの3000メートルから3600メートルの標高を中心にした地域で、あまり乾燥していない所に棲息しています。

エクァドールで、このハチドリにまず間違いなく会える探鳥地は、ヤリハシハチドリや、首都キート市紋章の鳥(Emblem of Quito)に指定された超希少種Black-breasted Puffleg(ムナグロワタアシハチドリ)を見るためのお決まり訪問地、海抜3450メートルにあるYanacocha保護区です。 ただ、後者は真の超希少種で同時に絶滅危惧種(CR)でもあるので、現在鳥類学者や関係者が、唯一の棲息地となってしまったと推測しているYanacochaへ行っても、ムナグロワタアシハチドリにはまず会えないと思って出掛けてください。一方、ルリバネハチドリは、Buff-winged Starfrontlet(モンツキハチドリ)とともにここではいわゆる普通種ですが、バーダーが好んで訪れるTandayapa ValleyやMindoなどの他の探鳥地では高度の関係でしょうか、ほとんど見ることはありません。


Great-sapphirewing (和名:ルリバネハチドリ 学名:Pterophanes cyanopterus)

同地で、上空で騒いでいた野鳥が気になるのか、しきりに上を見ていたルリバネハチドリ。

私が第82回掲載のところで、全身がロイヤル・ブルーに輝くハチドリをアオミミハチドリの変種、あるいはこのハチドリと陽光、その反射角度とレンズと被写体が作る角度の関係で、アオミミハチドリが写真のように映ったのだろうかなどと、混乱した頭で考えていましたが、あれから2年経ち、一般観光のガイドさんではなく、野鳥専門のガイドさんと数々の探鳥地をハチドリ中心に見て廻って来た今は、このCotacachiの町の高級フランス料理レストラン“La Mirage”で撮ったハチドリはほぼ間違いなくルリバネハチドリだと言えます。ただ、Cotacachiの町は湿度の高い土地ではなく、どちらかと言うとかなり乾燥した地域にある点がちょっと引っ掛かるのですが。以前にも書きましたが、エクァドールでバード・ウォッチングをされる場合、世界に328種(ただし最近発見された新種は含みません)存在するうちの132種もがこの国に棲息するハチドリも主な対象になると思いますが、その同定は私共アマチュアにはとても難しいので、出来ることなら日本語で説明して貰えるガイドさんと廻れたら理想的ですね。現地のガイドさんの英語は、実に流暢、発音もネイティヴな米語を話す人から、スペイン語訛りの強い英語を話す人まで様々ですが、ハチドリ、タイランチョウ、フウキンチョウなど類似の種が多い野鳥が次々に現れるので慣れた言葉で、日常会話ではなく専門用語を聞く方が、遥かに鳥見や撮影に集中できると思います。ただし、未だエクァドールには日本語を話す野鳥専門ガイドさんは在住してはいません。

ここに掲載した2葉の写真はどちらも上記のYanacocha保護区で撮ったものです。我々標準的な日本人にとって、高度順応期間を充分に取ることなしに、標高3500メートルの低い気圧と、薄い酸素の空気を呼吸しながら山道を歩くのは、登山家でヒマラヤ等の高山に慣れた極少数の人達を別にすれば、一種の難行苦行以外の何ものでもありません。その日も、息苦しい山行の気を紛らわせるために、La Costa(海岸地帯)にまで続く山並みに目をやったり、左側に見え続ける活火山Pichincha(ピチンチャ山4675M)を眺めたり、山道に咲いている高山植物の花を愛でたりしながら歩き続けました。探鳥地Mindo-Nambillo地区には、標高の高くない所(1400メートル)から高い所(4000メートル)まで、何処へ行ってもフクシア、あるいはホクシャと呼ばれるFuchsiaの花が咲いていて、これらの花に様々なハチドリやミツドリがやって来ます。ヤリハシハチドリはダチュラの花の蜜を吸い、Collared Inca(シロエリインカハチドリ第144回掲載)はBromarea caldasii ssp caldasii (和名不明)などの蜜を吸いに来ます。どのハチドリがどの花を好むかということもガイド・ブックに記載されるようになると、もっと楽しいのでしょうが。