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No.183 Galapagos Brown Noddy

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、"Galapagos Brown Noddy (和名:ガラパゴスクロアジサシ 学名:Anous stolidus galapagogensis)"です。

Galapagos Brown Noddy (和名:ガラパゴスクロアジサシ 学名:Anous stolidus galapagogensis)

North Seymour島とBaltra島の間に横たわる広い水路を飛んでいたクロアジサシの番。雌雄の違いは分かりません。先頭の鳥にフォーカスする心算だったのですが、ピントは後ろの鳥に来てしまいました。

今回取り上げるガラパゴスクロアジサシは第85回にも扱いました。そのときの写真は、低空からダイブして、水面近くを泳いでいた魚を咽喉袋の中に捕獲したカッショクペリカンの背に乗って、ペリカンに今捕食したばかりの魚を吐き出させようと、あるいは長い嘴の端から逃げ出して来るかもしれない小魚のおこぼれにあずかろうとしていたものでした。シャッター・チャンスとしては面白いものでしたが、写真としては恥ずかしながらどうしようもないもので、この水鳥がどんな鳥なのか、分かりにくいものでしたから、ここに改めてこのガラパゴスクロアジサシの写真を載せます。

12月に3泊4日の(国際的なガラパゴス・ヴァカンスとしてはとても短い滞在ですが、日本人の勤め人の感覚ではそこそこの日数だと思います)滞在日程で行ったときは、それまで仕事関係者と同諸島を訪れたときにはほとんど撮っていなかった、野鳥や個人的に思い入れの強いアカハシネッタイチョウを主に撮る心算で行ったので、今まであまりシャッターを切っていなかった野鳥の写真がそれなりに撮れました。海鳥が主で、狙ったものの中にはこのクロアジサシとキョウジョウシギも入っていたのですが、ミズナギドリ、ウミツバメなど体も大きくなく、地味で、素早く飛び回ってばかりいる海鳥の写真は上手く撮れませんでした。ガラパゴスの海鳥は、ご存知のようにフォトジェニックなものが多いので、つい、いわゆるシギチには関心が薄くなっていたのも事実です。


Galapagos Brown Noddy (和名:ガラパゴスクロアジサシ 学名:Anous stolidus galapagogensis)

同じ場所。岩の上で羽を休めていたガラパゴスクロアジサシ。休んでいるにしては目付きが鋭いですね。野鳥の目付きは一般的に鋭いものが多いのですが、このクロアジサシはその中でもぴか一かも知れません。

このクロアジサシは、撮ろうと思って改めて注意を払ってみると、色々なところで見ることが出来ました。そのことは私にとって、ある意味で新しい発見でした。ただ、狭い場所というか狭い水域で、かつ人間が多いところでは、かなり早いスピードで、方向性を定めず飛び廻っているばかりで、写真はとても撮りにくく困りました。特にSanta Cruz(サンタ・クルス)島のAcademy Bayの西側に位置する、奥まった入江の入り口にある波止場では、宿泊していたAngermeyer Innへの行き来に水上タクシーを利用しなければならない都合上、頻繁に立ち寄りましたが、いつも一番(つがい)のクロアジサシが水面近くにいるイナッコ(鎌倉付近ではボラの幼魚をこう呼びます)を獲っているのを見ました。

この船着場には、いつも10台あまりの水上タクシーと呼ばれる船外機付きの小さな木造舟と、沖に停泊している定員数百人も収容できる大型観光船から中小のクルーザーなど、数十隻に上る観光船の乗客を運搬するPanga(元来は小舟を指していた)と呼ばれるゴム・ボートがひっきりなしに出入りするので、クロアジサシも落ち着いて餌を捕っていられないはずなのですが、イナッコが一杯いるので、ここを餌場と決めているのでしょう、クロアジサシの番がアオアシカツオドリ達と飛び廻っているのが見られました。何回かクロアジサシの飛翔姿を撮ろうとしたのですが、ブレたものしか撮れませんでした。そんなこんなでクロアジサシの飛翔を撮るのは半分諦めかけていたのですが、滞在3日目にグンカンドリとアオアシカツオドリの営巣地、North Seymour島へ行った日に、船着場代わりに使っている溶岩の崖で後のゴム・ボートで来る同船者を待っている間に、やっと待望のクロアジサシの飛翔が撮れました。