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No.182 Galapagos Red-footed Booby

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、"Galapagos Red-footed Booby (和名:ガラパゴスアカアシカツオドリ 学名:Sula sula websteri) & Swallow-tailed Gull (和名:アカメカモメ、エンビカモメ 学名:Creagrus furcatus)"です。

Galapagos Red-footed Booby (和名:ガラパゴスアカアシカツオドリ 学名:Sula sula websteri)

North Seymour島のブッシュの上を北から飛んで来たRed-footed Booby。

今回はガラパゴス諸島の野鳥に戻って、Red-footed Booby(アカアシカツオドリ)とSwallow-tailed Gull(アカメカモメあるいはエンビカモメ)を取り上げることにしました。ガラパゴス諸島に棲息するBooby(カツオドリ)は3種で、その内、アオアシカツオドリとマスクカツドリは、同諸島を巡る簡易定食観光コースでも容易に見ることが出来ますが、アカアシはお決まりの観光コースからはちょっと離れた島、あるいは許可を受けた研究者は入れるが、一般観光客は法律的に足を踏み入れてはならない地点などで繁殖棲息していますので、私が写真を撮るチャンスはありませんでした。

この写真が撮れたのは、去年の12月に取った休暇で、日程を遣り繰りして、アンデス西山麓、東山麓、グァヤキール本社訪問、そしてガラパゴスでの滞在3泊を捻り出して、乗り合い観光船でNorth Seymour島へ行ったときでした。民間と空軍が使用する飛行場のある島“Baltra”の北側に位置するNorth Seymour島はグンカンチョウとアオアシカツオドリの営巣・棲息地としてよく知られています。ガラパゴスへ到着し、ダーウィン研究所へゾウガメを見に行ったときに、ガイドさんのLuis(ルイス)に「今は潮が悪く、アオアシの有名な求愛ダンスは見られないし、巣作りもしていないので、グンカンチョウの未だ相手を見つけていない雄が咽喉袋を膨らませているのくらいしか期待しないで下さい。」と、言われていたので、もう一つ気合が入らないまま、同島へ上陸しました。正直言うと、そのとき私の頭は既に次の訪問地Bacha Beachで妻が楽しみにしているフラミンゴが見られるのかどうか、で一杯でした。火山岩で出来た磯で餌を探して歩き回っていたキョウジョウシギや、海面を飛び回っていたガラパゴスクロアジサシの写真を撮った後、長い月日のうちに砕かれた珊瑚と貝殻で出来た白い浜辺を、強い直射日光を気にしいしい、歩き出すと、見慣れないカツオドリが一羽此方に飛んで来るのに気が付いたので、慌てて、レンズを向けました。間髪を入れず、ルイスが”Es piquero de pata rojo. (アカアシカツオドリですよ。)”、と、怒鳴ってくれたので、夢中になってシャッターを切り続けました。残念だったのは、その少し前に、昼寝をしている母アシカと乳を求めて纏わり付いていた仔アシカの写真を撮っていたので、飛びものを撮るための連続フォーカスの設定になっていなかったので、ピントが甘いものばかりでした。アカアシが飛んで行ってしまった後で、ちょっと気になったので、「この夏、日本のバーダー・グループがこの島に来たときも、アカアシカツオドリの写真を撮った、と私がよく読ませて貰っているコスタ・リカ在住バーダーの方のホーム・ペイジに書かかれていたけれど、アカアシがこの島に来るようになったのですか。」と、聞いたところ、「この島、North Seymourの北部、観光客が入れない所にアカアシが棲息している所があるんですよ。」と、教えてくれました。

Swallow-tailed Gull (和名:アカメカモメ、エンビカモメ 学名:Creagrus furcatus)

7年程前にPlaza del Sur島の断崖付近を飛び回っていたSwallow-tailed Gullを撮ったもの。

アカアシカツオドリの見られる写真は一枚しかありませんので、2枚目に何を取り上げようかと迷いましたが、ふっと、前述のバーダーの方が、アカメカモメあるいはエンビカモメの飛翔姿を良く記憶していないので、Swallow-tailed と呼ばれるこのカモメの尾羽が飛翔中、Swallow-tailed Kite(ツバメトビ)のように開いているのかどうか、はっきりしないと書かれていたのを思い出したので、過去に撮った写真をDVDから引っ張り出して見てみました。どうやら、高速(このカモメとしては)で飛翔している時は、空気抵抗を少なくするためでしょう、尾羽は閉じていました。それは、アカハシネッタイチョウの二本の細長い尾羽も飛翔中は重なって一本になっているのと同じだと思います。アカメカモメもネッタイチョウも着陸する時や方向転換する時に、尾羽を開くようです。その点、ツバメトビのように高速で飛翔中も尾羽を優雅に開いているのとは異なります。

ガラパゴスと言えば、先月と今月ユネスコの専門家チームが同諸島を訪れ、世界自然遺産として然るべき管理下にあるかどうかを調査して行き、その報告が16日公表され、幾つかの勧告がなされたようです。先月、前述した島の飛行場を管理する空軍とガラパゴス国立公園管理官との間で騒動が起き、女性公園管理責任者が怪我をしたことが大々的に新聞報道されました。軍の一部と観光業者の癒着が事件の発端でした。事態を重視したエクァドール政府の、軍務大臣、環境大臣、観光大臣はたまたま総て女性大臣だったせいか、直ちに、同空港責任者の司令官と関係軍人数名を更迭しました。「世界遺産は今日生きる総ての人々が共有し、次の世代に受け継いで行くべきものです。」と、謳うユネスコの理念が空虚でないことと、世界遺産を抱える国家、自治体の責任の重大さを再確認しました。それに較べ、世界文化遺産に鎌倉を指定して貰おうとしている市は、日蓮上人が遠島を命じられた時小船に乗せられた、などの歴史的逸話のある豆腐川、今では少なくなったアカテガニが棲息しているこの小川を暗渠にし、私の記録では過去30種近くの野鳥がやって来た3本の榎の古木を始め林の木々を伐採して、風致地区内の山裾に4.5メートル幅の車道を造るような、材木座紅谷(べにがやつ)の某銀行寮跡地の宅地開発に認可を与えたこと、鎌倉市街地の緑の急速な減少に何らの手段を講じようとしないこと等、世界文化遺産の意義をどのように解釈しているのだろうかと考える今日この頃です。