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No.181 Wattled Jacana

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、"Wattled Jacana (和名:ナンベイレンカク 学名:Jacana jacana)"です。

Wattled Jacana (和名:ナンベイレンカク 学名:Jacana jacana)

Hcda Nueva Union内の幹線農道と平行して作られた農業用水路(La Costa中部では給水路としてよりも排水路として掘られたものの方が遥かに多いのですが)に沿って、飛んで行ったナンベイレンカク。

この鳥は第35回に扱っていますが、そのときの写真はエクァドール最大のバナナ農園、Hcda. Clementina(クレメンティーナ農園)の南の入り口から農園内の西部にかけて雨季になると必ず出現する、3000から年によっては5000ヘクタール(町歩)を超えるような巨大な池の水草の上を歩いていたレンカクと、有機バナナや有機米の栽培に力を入れているSr. Ledesma(レデスマさん)の水田に幼鳥と一緒にいたレンカクの写真でしたので、バナナ園内で撮ったものをいつか載せようと考えていました。レンカクはバナナの葉に上ったり、そこで羽を休めたりするようなことはしないし、水面をすれすれに飛ぶので、バナナ園内に掘られた深さ3、4メートルの水路から上を飛ぶことはまずなく、バナナを背景にした写真を撮ることは出来ませんでした。

去年産地視察をしていたときに、私たち訪問者を警戒して飛び立ち、水路の上をナンベイレンカク特有の翼下面の白い羽を誇示するかのように飛んでは、20メートル程離れた所に舞い降り、人間が近づくとまた飛び立つ、といったことを繰り返していたので、タイミングを計って数回シャッターを切りました。帰国して、画像をコンピューターで拡大してみると、水路の水面にバナナの幹、正確にはpseudostem(偽茎、或いは偽幹)が映っているのに気が付きました。「バナナ園内に間違いなく棲息しているという証拠写真にはなるな。」と、ほっとしました。

35回のときにも書きましたが、La Costa(海岸地帯)では、水田開発、放牧場拡大、市街地造成等で、自然な状態での湿地帯が次々と減少中という、自然環境悪化のマイナス面はあるのですが、今日ナンベイレンカクの天敵がほとんどいない状態となっていますので、この鳥はここ数年その数を増やしているように思えます。天敵というのは、TVの自然紹介番組などでも放映されているように、先ず、クロコダイル、カイマンといった鰐類ですが、これらはLa Costaではほぼ絶滅状態ですし、アナコンダ、ボアなどと呼ばれる大型の蛇もその生息数は著しく減少していますし、水鳥を捕食する猛禽類も同じく減っているのです。その上、何よりこの鳥の肉が友人達の言葉を借りると、不味いので、地上最強の捕食者、人間に狩られることもないといった条件下では生息数を伸ばすことも当然だと思います。だからといって、色々な意味で汚染された水辺でもこの水鳥を見られるかと聞かれれば、その答えは”No”です。

Wattled Jacana (和名:ナンベイレンカク 学名:Jacana jacana)

僅かにクリーム色がかった下面の羽は、羽を広げた時にははっきりと見えますが、翼を畳んだ状態では殆ど目立ちません。上記バナナ園内用水路の土手で撮影。

今回掲載した二葉の写真を撮ったLa Costa中部地帯にあるHcda Nueva Union(ヌェヴァ・ウニォン農園)は、過去数年の間サニート・バナナを作っていましたが、農園周辺の自然条件の変化と農園管理上の理由から、今ではサニート栽培は止め、エナーノと私共グループの国際ブランド”Bonita(ボニータ)”バナナを出荷しています。サニートを栽培していたときには有機栽培に近いような栽培管理をしていましたので、今でも他の農園と比較するとその化学物質使用量はかなり少なく、農園内の水路には、ユキコサギ、ササゴイ、ナンベイレンカク、アメリカムラサキバン、ミドリヤマセミ等が見られ、そして一歩バナナ園内に入ると、タニシトビ、ソライロフウキンチョウ、アカボウシヒタキ、マメルリハインコ、イエミソサザイ、カワリヒメウソなどの野鳥を見ることが出来ます。