バナナ園の野鳥と生き物 = バックナンバー =


No.180 Osprey

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、"Osprey (和名:ミサゴ 学名: Pandion haliaetus) & Turkey Vulture (和名:ヒメコンドル 学名:Cathartes aura)"です。

Osprey (和名:ミサゴ 学名: Pandion haliaetus)

Chongon湖の上空を旋回していたミサゴ。北から来た鳥なのか、それとも居付きの鳥なのかとても興味があります。

此処のところ小さい野鳥が続いたので、今回は大きな野鳥を扱います。大きな鳥といっても、アマゾンやアンデス山麓に棲む冠羽の立派な鷲鷹類の写真と呼べるような写真は恥ずかしながら一枚もありません。かといって、農業開発、漁業開発、産業特区(工場地)造成、大規模・小規模宅地開発、などの人間が生きて行く上で起きて来る諸開発によって、巨木、古木がほとんど伐採され、原生林に象徴される原始の姿が失われてしまったLa Costa(海岸地帯)では、たとえ僥倖に恵まれたとしても、一部の西アンデス山麓か、特別な自然保護地区でこれらの冠羽のある大型の鷲鷹の姿を遠くから見ることが出来たら万々歳で、写真に撮ることなどは望外の沙汰です。大型の鷲鷹類では、サバンナノスリ(第150回掲載)やカラカラ以外の大型猛禽類はまず見ることはなく、クロクマタカをごく稀に自然保護区”El Cerro Blanco”で目撃した事が報告されているだけのようです。そんな訳で、ミサゴと現地で”Gallinazo rojo(ガジナッソ・ロッホ)”と呼ばれているTurkey Vulture(ヒメコンドル)の飛翔姿を載せることにしました。

ミサゴは、北半球の冬に北米から渡って来るものが大部分ですが、なかには春になっても北に帰らず南米に留まるものがかなりあると、ガイド・ブック”The Birds of Ecuador”に説明されています。ただ、営巣をして子育てをしたという報告例はないそうです。ここに載せたミサゴの写真は、人工湖“El Chongon”で去年の12月に撮ったものですが、この鳥は去年の1月に出張した折も、3月のときにも撮っていますので、冬になると必ずやって来るのだと思います。ミサゴを初めてかなり近い距離から見たのは、私の弟家族が30年程も住んでいるカナダのヴァンクーヴァー郊外にある湖Banzen Lakeを、弟と甥、留学していた息子そして私の4人で訪れたときでした。当時はまだその湖には、土曜、日曜日でもない限りあまり大勢の人達が来なかったので、平日は落ち着いて鳥見が出来ました。森の中のパーキングで車を降りると、「ピー、ピーッ、」と力強い鷲鷹類の鳴き声が、高い樅の梢から繰り返し聞こえていましたが、それはミサゴが巣で鳴いているのだと分かるのに時間はかかりませんでした。その後湖畔に行き、暫くの間私は、初夏の岸辺の潅木にたわわに実った木の実に群れていたCedar Waxwing(ヒメレンジャク)などの写真を撮り、弟たち3人は鱒を狙って糸を垂れていました。そのとき、突然大きな白頭鷲が舞い降りてきて、釣り人が捨てていた魚を掴んで森の中へ飛んで行ってしまいました。ミサゴと白頭鷲を続いて目撃出来たという、そんな素晴らしい思い出があるので、この鳥には思い入れが深いのです。

Turkey Vulture (和名:ヒメコンドル 学名:Cathartes aura)

さすがにこのクラスの鷲鷹類が十数羽群れて頭上を飛び廻ると迫力がありますよ。

二枚目に載せたTurkey Vultureは、前述のミサゴを撮る40分程前に訪れていた自然保護区”El Cerro Blanco”で、第170回に載せたワタボウシミドリインコを撮っていた夕暮れ時、上空にいつの間にか十数羽のTurkey Vultureが群舞し始めたのを撮ったものです。エクァドールでTurkey Vultureが群れているのを見たのは初めてでした。

このEl Cerro Blancoに関して、3月21日の「世界森の日」にあわせて、興味深い記事が同国の主要新聞に載っていましたので、要点を幾つか紹介します。面積6,078ヘクタール(ha:町歩)の同保護区内の200haは、過去に森を焼き払われ永年牧草地となっていたのですが、1993年から森林再生計画の下で、そのうちの150haで植林を開始し、そこに固有の木々20種を植え続けて失われたBiodiversity(生物多様性)を取り戻そうとしていますが、5メートルから10メートル位の高さの木々に覆われた林になるまでに約8年が必要で、かつての森の姿を取り戻すには、なんと150年かかると書かれています。さらに、近年問題になっている地球温暖化防止策の一つとしては、ある研究によると平均的な一本の樹木は、一生の間に約1トンのCo2を取り込むのだから、木を大切にしようと呼び掛けています。発展途上国のエクァドールの有志達が150年という長い年月を頭に入れて森を再生しようとしているのに、ユネスコの世界文化遺産に指定して貰おうとしている古都鎌倉の材木座の山裾で、3本の楡の古木が宅地開発のために切られようとしています。県の許可も下りると業者は言っていますが。経済効率を少し犠牲にすれば3本の楡の古木は生き延びることが出来るのに。アマゾンや東南アジアの森を、木を守ろう、と国際的に発言している世界第二の経済大国日本はどうなっているのだろう。