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No.179 White-bellied Woodstar

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、"White-bellied Woodstar (和名:シロハラチビハチドリ 学名:Acestrura mulsant)"です。

White-bellied Woodstar (和名:シロハラチビハチドリ 学名:Acestrura mulsant)

シロハラチビハチドリ(雄)を真正面から撮れていたら咽喉下の紫色の輝きはもっと素晴らしいものだった筈なのですが。

今回扱うシロハラチビハチドリは、エクァドールに棲む8種のWoodstarの内では最も個体数が多く、アンデスの東及び西山脈、中央部の高原地帯という広い範囲で見ることが出来ます。それも当然で、ガイド・ブック”The Birds of Ecuador”によれば、このハチドリはコロンビアからボリヴィアの西部に至るアンデス高地で広く棲息しているようです。ただ、野鳥観察観光のための諸施設、英語で言うところのFacilitiesが整っている、アンデス西山麓北部のMindo-Nambillo地区のTandayapaやMindo周辺のフィーダーにやって来るのは、フジノドハチドリ(Purple-throated Woodstar第132回掲載)の方が圧倒的に多いため、ガイドさんからの説明がないと、シロハラが希少種で、フジノドは普通種かと勘違いをしがちですが、フジノドハチドリは主としてコロンビァのアンデス地帯から、エクァドールでは北西部のMindo-Nambillo地区までしか棲息していないlocalなハチドリなのだそうです。ただ、以前にも書きましたが、ハチドリは一般的にlocalなもの、今風に言えば「地域限定」型が多いことも事実です。

野鳥観察観光の施設が整っている地域、と書きましたが、ではそれらが整っていない地域もあるのか、と訊かれましたら、その答えは「はい。」です。もともと、エクァドール観光は、首都Quito(キート)の北にある赤道記念碑、ユネスコの世界文化遺産に指定されたスペイン統治時代に建設された旧市街、首都から車で3時間ほど北にある民芸品や先住民文化色に満ちた羊毛織物などを売っているOtavaloインディオ市場、そして飛行機で簡単に行けるようになったガラパゴス諸島など、首都キートを基点としたツァーを中心に発展して来たので、気候もヨーロッパや北米に似たアンデス高地の中北部には欧米観光客向けのレストランや首都の金持ちを相手にした素晴らしいリゾート・レストランが次々と建てられました。Bird-watchersがキート周辺の探鳥地に来るようになったのは、Mindoで世界でも比類ない、単位面積当たりの野鳥種数が観測されたというニュースが国際的に拡がったのと、その数年後に国家交通政策の一環として全国の舗装道路網が完備されてからのことですから、今から15、6年前まではそれらの高級レストランにもハチドリ用のフィーダーはあまり吊るされていませんでした。その後、主として欧米人バーダーを対象とするHosteria, Hostal, Lodgeなどと呼ばれる宿泊設備も完備され、さらにそれらのオーナーは夫々の庭園内、裏山などに挙って、過去に伐採されてしまって姿を消していたその地域固有の木々を植え、失ってしまった自然環境の復元に力を入れて来ています。その努力の結果それらの場所では比較的容易に様々な野鳥を見ることが出来ます。今では、アンデス西山麓やアマゾン源流部へ数時間で行かれる、キートからのハイウェイ沿いにあるレストランで探鳥地にあるものは、フィーダーを吊るしていない所の方が少ないくらいです。その一方、La Costa(海岸地帯)や南のあまり外人観光客が来ない所では、フィーダーを吊るしてあるレストランは稀です。バナナ産地廻りをよくする私ですが、そのようなレストランは思い当たりません。もう数年もしたら、La Costaや南部地区でも、フィーダーを吊るすレストランも珍しくはなくなるのでしょうが。

White-bellied Woodstar (和名:シロハラチビハチドリ 学名:Acestrura mulsant)

こちらの方は、ピントは良かったと思っているのですが、角度が咽喉下の羽の色を撮るには真横過ぎました。

本題のシロハラチビハチドリを見たり写真に撮ったりするのは、東山麓のPapallacta-Baeza地域などの方が、この種と良く似ていて紛らわしいフジノドハチドリがいないだけ、撮影に集中出来るのでお勧めです。今回掲載した二葉の写真はどちらも、東山麓にあるGuango Lodgeで撮ったもので、一枚目は陽の当たっている枝に、正面を向いて止まっていたTourmaline Sunangel(トルマリンテンシハチドリ)を撮ったあと、私の後方で順番を待ってくれていた二日前にMindo Lomaで知り合ったアメリカからのバーダー・グループに場所を譲って、カフェへ向かって歩いていたとき、前方のフィーダーに来ていたシロハラを撮ったものです。二枚目は妻と、ガイドさんのDannyそしてドライヴァーのJairon (ハイロン)の4人でカフェとケーキで十時を取っていたとき、フィーダーに戻って来たシロハラを大急ぎで撮ったものです。私の慌てた様子が可笑しかったのか、皆くすくすと笑っていました。