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No.178 Buff-tailed Coronet

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、"Buff-tailed Coronet (和名:フチオハチドリ 学名: Boissonneaua flovescens)"です。

Buff-tailed Coronet (和名:フチオハチドリ 学名: Boissonneaua flovescens)

夕方の陽と、フチオハチドリの頭の上げ具合、そしてレンズとの角度が偶然作り出した写真です。こんな諸条件を計算してシャッターが押せたら、素晴らしいのですが。

このハチドリはアンデス西山麓のMindo-Nambillo地区のMindo Loma、Tandayapa Valley、Bella Vista等では、まるでいわゆる普通種(あまり好きな表現ではありませんが)のように頻繁に見られるので、このハチドリはエクァドールのアンデス地帯では何処にでも棲息しているのかと思っていましたが、ガイド・ブック”The Birds of Ecuador”の解説によれば、ヴェネズエラの西部からコロンビアの山地とエクァドールの北西部に至る地域にのみ棲息域が限定されている、かなりローカルなハチドリのようで、エクァドール・アンデスの東側での目撃例は一部の地域でしか報告されていないとのことです。

このフチオハチドリも、他の多くのハチドリ達のように、頭を上げている時に顔を真正面から撮った写真と、枝に止まって普通の姿勢で休んでいる時に撮ったものではかなり違った印象を与えてくれます。写真は光の芸術と言われますが、レンズと被写体の角度によって劇的なまでに変化するハチドリの羽の色も正に光の芸術そのものだと言えるでしょう。モルフォ蝶の羽の色も、その角度によって美しく変化して見えますが、ハチドリ達のそれには及びません。こんなことを言うと蝶愛好家の方々は納得いかないかと思いますが、ぜひフィールドでこれらのハチドリを見ていただけたらと思います。その中でもVelvet-purple Coronet(フジイロハチドリ 第166回掲載)の変化は、まさに筆舌に尽くせません。光を派手に、美しくと言った方が良いのでしょうか、反射する羽毛が、頭頂、額、のど、胸、腹、背、等と他のハチドリよりも多くの部分でそれぞれ異なるメタリック・カラーに輝くからです。ひとこと付け加えますと、私もモルフォ蝶は大好きで、産地廻りをするときは、農薬使用がほとんど無いカカオ園やパイナップル畑の脇を車で通るたびに、車内からきょときょととモルフォ蝶を探すほどです。

Buff-tailed Coronet (和名:フチオハチドリ 学名: Boissonneaua flovescens)

一瞬後には両翼を畳んでしまいます。フィーダーの奥に止まっているのは第167回に掲載したチャムネテリハチドリです。

このフチオハチドリは、どちらかと言うと一見地味なハチドリの方に入るのかと思うのですが、一枚目の写真のような角度で撮れたものは、光を反射する額を除くと、全般的には派手さはあまりないものの、シックな感じで良いなあ、と思います。この写真を撮ったのは、12月にMindo LomaでBlack-chinned Mountain Tanager(第174回掲載、クロアゴフウキンチョウ)とBlue-winged Mountain Tanager(アオバネフウキンチョウ)などの派手な野鳥を撮った後、静かに鳥見の順番を待ってくれていたアメリカからのバーダー・グループにウッド・デッキを譲って、夕日に照らされた庭に降りて来たときに、脇の枝にフチオハチドリが止まっているのが目に入ったので、レンズを向けて撮ったものです。小さなハチドリのことですから、カメラ背面のモニターで確認するまでは、これ程までに額の緑がメタリックに輝いているとは気が付きませんでした。

二枚目の写真は、去年の4月Upper Tandayapaともアメリカ人のバーダーが呼ぶ、海抜2200メートル にあるBella Vistaのホステル”Hosteria Bellavista”の庭で撮ったもので、このときも私の目当ては、ここの庭に来るハチドリ達の主役、Collared Inca(第144回掲載 シロエリハチドリ)とGorgeted Sunangel(ビロードテンシハチドリ)を撮ることだったのですが、圧倒的に数の多いフチオハチドリ達がフィーダーに止まる直前に、一瞬ですが、翼を一杯に開くことに気が付きました。その様子がなんとも魅力的だったので、なんとか撮り止めようとしたのですがとても難しく失敗続きでした。やっと撮れたのがこの一枚でした。