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No.177 Tyrian Metaltail

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、"Tyrian Metaltail (和名:エメラルドテリハチドリ 学名:Metallura barani)"です。

Tyrian Metaltail (和名:エメラルドテリハチドリ 学名:Metallura barani)

2006年4月2日(エクァドール時間)Yanacochaで撮影したTyrian Metaltail (エメラルドテリハチドリ)の雄。尾羽の内側は赤く写ってはいません。

今回取り上げるハチドリTyrian Metaltailは、ガイド・ブック”The Birds of Ecuador”の説明によると、アンデスの西山脈でも東山脈でも、海抜2300メートルから3400メートルの高地に棲息しており、一方これに良く似たViridian Metaltail (キンミドリテリオハチドリ)は、赤道が走っている地帯(首都キート周辺)ではアンデス西山脈には棲息しておらず、東山脈の3000メートルから3700メートルの高地にだけ棲息しているとあります。

なんでこんな書き出しで始まったのかと言いますと、昨年の2月と4月に西山脈のYanacochaでこのハチドリを撮ったときは、ガイドさんのDannyの教えてくれた通り、この鳥をTyrianと信じて疑問も持っていなかったのですが、後日、久し振りの休暇を妻と二人で、永年お世話になった私にとっては第二の故郷のようなエクァドールで過ごすことを決めて、初めて訪問するGuango Lodgeのホーム・ペイジをインターネットで読み始めたとき、そこに掲載された一枚の写真が、文字通り目に飛び込んで来ました。その写真はTyrian Metaltail, male Photo by Kathy Kinnieと署名されていました。そこに写っているTyrian Metaltailは、多分、何かに止まる直前にホヴァリングしている瞬間を正面から撮ったものでしたが、私に大きなショックを与えたのは、その大きく開かれた尾羽の内側が鮮やかな赤紫だったことです。2月と4月にこのハチドリを撮ったときも、フィーダーに止まっては、中のネクターを吸い、他のハチドリが来ると飛び立ち、またフィーダーに戻って来るといったことを繰り返していましたので、何回かは私の正面で尾羽も開いていたはずなのですが、尾羽の内側の赤紫は目に入りませんでした。なにか釈然としないので、ガイド・ブックを開いて、このハチドリのイラストを見てみると、確かに著者はこの鳥の尾羽の内側を赤く描いています。

Tyrian Metaltail (和名:エメラルドテリハチドリ 学名:Metallura barani)

2006年2月1日(エクァドール時間)Yanacochaで撮影したもの。夕刻、一瞬の霧の晴れ間に撮ったのですが、この写真では尾の内側は見難いのですが、赤い色には見えません。

ところが、私の撮った写真はどんなに拡大してみても、尾羽の内側は焦げ茶色にしか見えません。念のため、エクァドールへいらしたバーダーの方々のホーム・ペイジに改めてお邪魔しましたが、この鳥の尾羽の内側が見られる角度から写真を撮られた方のものも、私の撮ったものと同様、ガイド・ブックのイラストやGuango Lodgeのホーム・ペイジに載っている写真のようにはその部分が赤紫色に写ってはいませんでした。今までも書いて来ましたし、Tandayapa Bird Lodgeのホーム・ペイジにも”from head on they show a beautiful ...”と書かれているように、多くのハチドリの雄は正面から見ると、額や、咽喉の下、胸などの羽毛が、あるものは赤く、あるものは緑に、あるものは金色に輝いて見えるのですが、見る者の角度が適当でないとその部分は単に黒やこげ茶色にしか見えません。そんなことがありますので、このハチドリの場合も、尾羽の内側も見る角度によっては赤く見え、その角度を外すと黒っぽくしか見えないのかなあ、と考えましたが、納得しきれませんでした。終いにはこの写真のハチドリは本当にTyrian Metaltail (エメラルドテリハチドリ)なのだろうか、それとも、もしかすると、Tyrian Metaltail の西山脈タイプなんていうのがあったりして、とか妄想を逞しくしておりました。ただ、私がこれはTyrianに違いないと判断したのは、以前にも書きましたアンデス東山麓とアマゾンへ至る峠にある温泉ホテル”Termas Papallacta(テルマス・パパジャクタ)”で売っていたパンフレット”Birds of Papallacta”にViridianとTyrianの側面からのイラストが載っており、そこに描かれたそれぞれの特徴を比較して私なりに納得したからです。

私は当分Yanacochaへ行く予定はありません。どなたか、あの3500メートルの高地へヤリハシハチドリを撮りに行かれる際に、このTyrian Metaltail (エメラルドテリハチドリ)に出会いましたら、この鳥がフィーダーに止まろうとする瞬間を真正面から撮って頂けたらなあ、と思います。私は弊社のパブリシティーの一環としてこの欄を書いていますので、バーダーの皆様のホーム・ペイジに書き込みをすることは控えておりますが、頻繁にお邪魔して写真を見せていただいたり、記事を読ませていただいていますので、そのような写真が掲載された場合は、直ぐに気が付くはずです。よろしくお願いします。