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No.175 Russet-backed Oropendola

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、"Russet-backed Oropendola (和名:セアカオオツリスドリ 学名: Psarocolius angustifrons) & Yellow-rumped Cacique (和名:キゴシツリスドリ 学名: Cacique cela)"です。

"Russet-backed Oropendola (和名:セアカオオツリスドリ 学名: Psarocolius angustifrons)

Baezaの町の南東で。牧場の奥を流れている川の向こう側には未だ原生林が残っていました。これは勿論アンデス東タイプのセアカオオツリスドリです。

今回はエクァドールに30種程いるIcteridae科の中から、巣を編んで吊るすツリスドリの中でも比較的目にしやすい2種を取り上げます。どちらもアンデス山脈の西にも東にも棲息しますが、それぞれ西型、東型の特徴があって、識別が容易です。ただし、私はどちらの鳥も両方の型を目撃していますが、写真に撮ったのはセアカオオツリスドリの東タイプとキゴシツリスドリの西タイプだけです。セアカオオツリスドリの西タイプは、度々書いている蘭園“El Pahuma”の付近で良く見掛けるのですが、警戒心が強いのでなかなか写真を撮らせてくれません。30メートル位まで近づいてレンズを向ける度に飛び立ち、60メートル程離れた枝に止まる、といったような行動を繰り返し、シャッターが押せません。もう一つの理由は、これが以外に肝心な理由かもしれませんが、私の視力とガイドさんのDannyの視力との悲劇的(?)と言っても良いほどの差で、私は裸視で現在は0.6位で、遠くを見る時は眼鏡の助けを借りますが、それで1.0位にしています。ところが、Dannyの視力と言ったら恐らく2.0以上は間違いなくある様なので、彼が見つけた野鳥を私が確認できないことはしょっちゅうで、「あのブロメディアが寄生している、左に伸びている枝の、違います。違います。その木ではなく、もう10 メートル程右にあるやつです。その枝の真ん中辺りに止まっているのですが・・・」と言われても、熱帯雲霧林ではブロメディアが寄生している木ばかりで、保護色のようになって、じっとしている野鳥を見つけるのは一騒動。そのうち、焦れたDannyが腕を上げて指差すものですから、日本でもそうですが、指差されることを嫌がる鳥は飛び立ってしまいます。そうして鳥が動いて初めてその野鳥を確認するような次第です。

Yellow-rumped Cacique (和名:キゴシツリスドリ 学名: Cacique cela)

このSeiboの木には約30のキゴシツリスドリの巣が作られていました。巣に出たり入ったりする鳥、見張りをする鳥が鳴き交わす声が谷に響き渡り、楽しい想い出でした。

私は大学時代にスペイン語をスペイン人の先生の下で勉強し、もう43年も南米と日本を行ったり来たりしているので、仕事や日常生活ではスペイン語での意思疎通にはまず不便は感じないのですが、野山に自生している樹木の名前、特に土地の人が一般的に使っている名前となると、とても私の語彙ではカヴァー出来ません。まして、ご存知のように熱帯雨林には多種多様な木々が雑多に生えています。それやこれやで、私にとって肝心な時、そう、初めて見る野鳥を鬱蒼とした熱帯雨林の中で、興奮して早口になっている現地の若者達の話し言葉で何処にいるのか教えてくれているのに、確認出来ない時のもどかしさはとても辛いものです。目にするチャンスの少ない野鳥に飛んで行かれた時などは、これがちょいちょいあるのですが、日本人のプロのガイドさんに日本語で指示されていたらどうなんだろう、などと自分の貧弱になった視力を棚に上げて考えることもあります。年寄りの我侭ですね。

左側の写真は12月の休暇で、アマゾンの源流部、東アンデス山麓のバード・ウォッチングで有名なロッジ”San Isidro”を訪ねた帰途、道路脇の古木の樹冠部でInca Jay(インカサンジャク)を見つけたのですが、若葉を陽光が透過すると薄緑の葉が黄色く映り、インカサンジャクの黄色い羽の色と見分けが付かなくなり、またもDannyを煩わせた挙句、一羽、二羽、三羽と逃げられ、最後に残った一羽も枝被りの証拠写真にもならないような物しか撮れず、落ち込んでいたときに、50メートル程離れた木に止まっていた番のセアカオオツリスドリを撮ったものです。もう、アマゾン源流部のBaeza(バエサ)の町の周りは、方々で乳牛の放牧のために、原生林は拓かれ、牧場が広がっていました。そんな牧場の一つの中に残された高い樹の梢で二羽が遊んでいため、慌てながらもマニュアルでフォーカスして、何とかシャッターが切れました。

右側の写真は雨季3月末に自然保護地区“El Cerro Blanco”を訪れ、山歩きコースの難易度が一番低い山道を歩いている時に、小さな谷を隔てて撮ったものです。乾季の間は葉を落としている木々に葉が茂ると熱帯乾燥林の景観は一変し、まさに熱帯雨林のジャングルと言った様相を呈します。アフリカのバオバオの木に似たCeibo(セイボ)も緑に覆われ、Yellow-rumped Cacique(キゴシツリスドリ)の産卵・子育てが始まります。樹皮に棘の生えたセイボの木を好んで巣を掛けます。そこのガイドさんの説明によると、キゴシツリスドリの巣には普通、上部と中央部そして時には底部に出入り口が有るのですが、真ん中の入り口だけが産卵室へ通じているそうで、これは鷹などの天敵を欺く為だそうです。