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No.174 Black-chinned Mountain-Tanager

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、"Black-chinned Mountain-Tanager (和名:クロアゴフウキンチョウ 学名:Anisognathus notabilis)と Blue-winged Mountain-Tanager (和名:アオバネヤマフウキンチョウ 学名:Anisognathus somptyuosus)"です。

Black-chinned Mountain-Tanager (和名:クロアゴフウキンチョウ 学名:Anisognathus notabilis)と Blue-winged Mountain-Tanager (和名:アオバネヤマフウキンチョウ 学名:Anisognathus somptyuosus)

Mindo Loma のバナナを置いた餌台に来ていたクロアゴフウキンチョウ。5m位の至近距離で写真が撮れました。そこのオーナーはこの鳥をヨーロッパからのバーダー、私たち日本人、12、3人のアメリカ人のバーダー・グループに見せることが出来たので誇らしげでした。

クロアゴフウキンチョウは、アンデス山麓でよく目にするアオバネヤマフウキンチョウと比較すると、その棲息域がアンデス山麓でも、北はコロンビア南西部からエクァドールの北西部、いわゆるMindo-Nambillo地区という、より限定された地域であるのと、棲息数自体も少ないせいか、かなり運が良くないとこの鳥には出会えないようです。勿論、Tandayapa ValleyやMindo、Bella Vista あたりを基地にして、数日腰を据えて周辺のBirding Spotsで鳥見をする場合は別ですが。

一方、アンデスの東山麓にも西山麓にも棲息するアオバネヤマフウキンチョウは、今までTandayapa ValleyやBella Vistaを訪問する度に樹冠部を動き回っているのを目にしました。ただ、撮った写真は、樹冠部にいる鳥を下から撮るので、ほとんどが言うところの枝被りばかりで、すっきりした写真は撮れませんでした。

この二種のヤマフウキンチョウは混群を形成することもよくあると、ガイド・ブック“THE Birds of Ecuador”に説明されていますが、ここに掲載したクロアゴフウキンチョウを撮ったとき以外は、二種が一緒にいるのを見たことはありませんでした。

フウキンチョウと言えば、私がよく読ませていただいているコスタ・リカ在住バーダーの方のホーム・ペイジで、フウキンチョウの中でもEuphonia、和名では「なになにスミレフウキンチョウ」と命名されているものは、最近のDNA研究によるとシトドに近い、といったような記事を読みました。可愛らしいEuphoniaはエクァドールにたくさんいますが、スズメの仲間のシトドに近いとは知りませんでした。そう言われてみれば、分かる気がします。

Blue-winged Mountain-Tanager (和名:アオバネヤマフウキンチョウ 学名:Anisognathus somptyuosus)

その後、餌台にやって来たアオバネフウキンチョウ。第166回のフジイロハチドリのところで書かせていただいた、素晴らしいマナーのアメリカからのバーダー・グループの人達は、”Beautiful !”“Superb !”をこの鳥に連発していました。希少種でなくても美しいものは美しいですよね。

DNAの話題で思い出すのは、十二月の休暇で首都キートのホテルからアンデス東山麓のPapallacta(パパジャクタ)峠へ向かっていたとき、出勤時間の渋滞に巻き込まれ、時間を持て余してガイドさんのDannyにエクァドールの鳥類研究について幾つかの質問をしました。彼が教えてくれたのは、棲息分布や分類学はかなり進んでいるが、まだまだ多くの研究分野で手が付いていない点があるのが実情です、ということでした。私が特に知りたかったのは、アンデス東山脈と西山脈の間に横たわっているキートの谷間は、広いところでもせいぜい20kmちょっとの幅しかないのに、何で多くの野鳥には西山麓型と東山麓型があるのだろうか、ということで、間に4000mから6000mのアンデス山脈が聳え立つ、アマゾンとLa Costa(海岸地帯)に棲息する鳥がそれぞれ異なる特徴を持っていてもそれは分かるのですが、と聞いたところ、大学生バーダーのDannyは説明出来ないと答えてくれました。その数日前に、インターネットで、日本では、ニホンザルのDNA研究で東日本型、西日本型などの成り立ちを追っているという記事を読んでいたので、そのことをDannyに言うと、彼もそんな研究が出来る資金がエクァドールの研究機関にあったらなあ、とため息をついていました。そんな訳で、私の疑問は未だそのままです。

ここに掲載した2葉の写真は、その二日前にSr. Efrain Lima(エフライン・リマさん)の蘭園“El Pahuma”を花好きな妻の希望で訪れた後、Tandayapa Bird Lodge, Satchatamiaでハチドリ達を見て、夕暮れ近くになって、Mindo Lomaに行ったとき撮ったものです。到着すると直ぐに、そこのオーナーが、“Bajan varios pajaros buenos de la montana.(良い鳥が山から下りて来てるよ。)”と、私達をウッド・デッキの方に招き入れてくれました。そこには、Buff-tailed Coronet(フチオハチドリ)、Velvet-purple Coronet(フジイロハチドリ)、Violet-tailed Sylph(ムラサキフタオハチドリ)、Booted Racket-tail(ラケットハチドリ)などのハチドリ達と、アオバネヤマフウキンチョウ、クロアゴフウキンチョウなどがいましたが、オーナーが言う良い鳥というのは、クロアゴフウキンチョウと飛んで行ってしまったGolden-headed Quezal(キンガシラカザリキヌバネドリ)の二種だけで、他の野鳥は、釣りでいう雑魚扱いの、普通種であって、良い鳥ではなかったのがショックでした。人の良いオーナーだっただけに。