バナナ園の野鳥と生き物 = バックナンバー =


No.172 Gray-cheeked Parakeet

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、"Fasciated Wren (和名:ヨコジマサボテンミソサザイ 学名:Campylorhynchus fasciatus)"です。

Fasciated Wren (和名:ヨコジマサボテンミソサザイ 学名:Campylorhynchus fasciatus)

人口湖 ”Chongon(チョンゴン)”の岸辺に作られた公園の中、ジャカランダの花が満開という幸運に恵まれ、その花を背景に幾つかの野鳥が撮れました。

前回は、新聞記事の件で緊急に掲載予定を変更し、臨時編としてペルームネアカマキバドリを取上げましたが、在日エクァドール大使館も、1.エクァドールとコロンビアの国境地帯は輸出用バナナの生産地ではない、2.日本向けエクァドール産バナナの産地は国境地帯からは遠く離れているので、除草剤が日本向けに輸出されているバナナを汚染するという危険性は一切無い、との要旨の証明書を出してくれましたので、私共としては一安心、再び、通常のローティションに戻った写真を掲載します。

今回扱うヨコジマサボテンミソサザイは第77回にも掲載しましたが、サニート農園の堆肥場で撮った写真はこの鳥の強面の面が強調されていたので、「フォトジェニックな写真も紹介しないと片手落ちだなぁ。」と思いましたのでまた取上げることにしました。

この鳥はLa Region Tumbesiana(トゥンベス地方)でも乾燥度がより高い地域を好んで棲息していますが、この鳥が同地方の固有種であるかどうかは知りません。この虫喰いの野鳥は、今では市街地にもかなり進出しており、電柱に取り付けられたトランス・ボックスと電柱の間に出来た隙間等の人工物を巧みに利用して巣作りを行うなど、都市生活にも順応しており、環境適応能力は非常に高いように見えます。日本のカラス程ではないしょうが。

1枚目の写真は、去年の1月下旬に人造湖”Chongon”の湖畔の公園を訪れたとき、遅れていた雨季の到来を察知して花を咲かせたジャカランダの枝に止まっていたのを撮ったものです。20センチ程もあるヨコジマサボテンミソサザイですから、5センチ位の花がくっ付きあうようにして咲くジャカランダの花とバランスがとれるのですが、体の小さな小鳥ではおそらくこの紫色の花の固まりに負けてしまうのではないかと思いました。

Fasciated Wren (和名:ヨコジマサボテンミソサザイ 学名:Campylorhynchus fasciatus)

湖面を西にして、夕陽を浴びながら一休みしていたヨコジマサボテンミソサザイが、Turkey Vultureの出現を警戒して頭を上げたところ。El Cerro BlancoとChongonは2、3kmしか離れていないので、私が40分程前に見ていたガジナッソの群れではないかと思いました。

2枚目の写真は、去る12月の夕刻、自然保護地区”El Cerro Blanco”で前々回掲載のワタボウシミドリインコや他の野鳥を撮った後、翌日がグァヤキールから帰国の途に着く日だったので、夕闇が迫る前に何か良い鳥が撮れないかと思って、上記のChongon湖の公園を訪れた時に撮ったものです。公園に着いて最初に目に入ったのは、北半球が冬になると必ずやって来るミサゴでした。その次に見たのがCacique(カシーケ)で、次にその真紅の羽を夕日に染めてもっと真っ赤にしたVermillion Flycatcher(ベニタイランチョウ)、止まり木にしている枝から忙しなく飛び立って、空中を飛んでいる虫を捕っていました。その次に見たのがこのヨコジマサボテンミソサザイでした。この大きく、強い筈のミソサザイが上空を心なしか不安げに見ているのが分かりますか。この時、上空から滑空しながら数羽のGallinazo Rojo(Turkey Vulture和名:ヒメコンドル)が下りて来たのです。周りの木々の梢で騒いでいた数十羽の現地で”Tiringo(ティリンゴ)”と呼ぶScrub Blackbirdは一斉に葉が茂った下枝に飛び込んで行きました。Turkey Vultureは残念そうに2、3回上空を旋回すると南の方へ他の仲間達と飛んで行ってしまいました。

私がこんな風にその時の情景を模写すると、いい加減なことを書いて、と思う方がこの鳥に詳しい人達の大部分だと思います。私はこのとき「やっぱり、このガジナッソ(現地では真正のコンドル以外はガジナッソとしか呼びません)は生きた小鳥を襲うこともあるのだ。」と、確信しました。というのは、その40分程前にEl Cerro Blancoでワタボウシミドリインコを撮り終わった後も、暫くあの愛くるしい インコ達を見ていましたが、そのうちインコ達が落ち着きを失くし出したので、何だろうと思って上空を見ると、遥か彼方を2羽の鷹が飛んで行くのを見付けました。それにしても、鷹は遥か彼方を一直線に飛んで行ってしまったのに、インコ達は未だ落ち着きません。夕空にはいつの間にか、15、6羽程のTurkey Vultureが集まって、山と林の上を旋回し始めていました。そのうち何羽かが、まるで狩をするような速いスピードでインコや他の小鳥たちがいる梢に滑空して来ました。小鳥たちはばたばたと、葉が茂る下の枝に飛び込んでしまいました。Turkey Vultureは動物の屍骸、腐肉を遥か彼方から嗅覚にものを言わせて探し当て、食べに来ると聞いていましたので、運転手のRamonと一緒に死臭がするかどうか、嗅いでみたのですが、何の異常な臭いはしなかったし、ガジナッソも一羽として地面に降りて来なかったので、変なこともあるなあ、くらいにしか思いませんでした。そんな経験をしたばかりでしたので、まるでTiringoに襲い掛かるように飛んで来たガジナッソ達を再度見たときは、「Turkey Vultureも生きた小鳥を襲うこともあるのではないか。」と考えました。夕刻の取餌時間にはガジナッソも生きた小鳥を襲うこともあるのかどうか、あるいはこの乾燥地帯だけで見られる特異な行動なのかどうか、専門家の方々に教えていただきたいなあ、と思いました。