バナナ園の野鳥と生き物 = バックナンバー =


No.171 Gray-cheeked Parakeet

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、"Peruvian Meadowlark (和名:ペルームネアカマキバドリ 学名: Sturnella bellicosa)"です。

Peruvian Meadowlark (和名:ペルームネアカマキバドリ 学名: Sturnella bellicosa)

バナナ園の新芽に止まっていたペルームネアカマキバドリ。この鳥は普段、草地の中に居る方が多いのですが。

今回は第46回に扱ったPeruvian Meadowlarkを、予定を急遽変更して、また取上げます。その理由は、昨日(二月四日)の朝日新聞の朝刊に「コロンビア散布―エクァドルSOS」、「除草剤被害、飛び火」という記事が二葉の写真とエクァドールが非常に小さく示された南米北部の地図が載っており、その記事をエクァドールの事情や同国のバナナ栽培に関して疎い(当然ですが)一般の消費者が読んだら、大変な誤解を招くと危惧したからです。記事の内容はエクァドールのマスメディアが伝えているものと違いはありませんが、タイトルを見ると先ず、エクァドールのバナナは危険なのではないかと、勘違いされる危険性があります。

記事の中の間違いは、バナナ、バナナと書かれ、写真説明にもバナナとされている芭蕉科の果物は、正確には我々が果物として食べている、世界の消費国でバナナと呼ばれているものではなく、英語圏では“Plantain”、西語圏では“Platano(プラタノ)”と呼ばれる料理用バナナのことです。プラタノは熱帯圏では、アジア、アフリカ、中南米、何処へ行っても、庭先にも畑にも広く植えられていて、エクァドールでもアンデス山脈の西側に広かるLa Costa(海岸地帯)はもとより、今回の問題が起きているアンデス山脈の東側に展開するアマゾン流域でも栽培され、人々の炭水化物供給源となっています。


Peruvian Meadowlark (和名:ペルームネアカマキバドリ 学名: Sturnella bellicosa)

アンデス西山麓の探鳥地、Tandayapa ValleyやBella vista、Yanacochaは下線部Nonoの近くにあって、パラモ、アンデス東山麓の探鳥地が始まるPapallactaも下線表示をしました。

この記事が日本の消費者に与える誤解、心配、不安などが、現に、本五日の月曜日には誤解に基づく質問という形で多数、私どもやエクァドール有機バナナを扱っている同業者の下に寄せられています。「朝日の記事を読みましたが、エクァドールのバナナは大丈夫ですか、安心ですか。」と言ったものがほとんどです。私どもは「安心です。まず、この痛ましい問題はアンデス山脈の遥か東のアマゾンで起きました。記事が書かれた場所、Lago Agrio(ラーゴ・アグリオ)は、散布が行われて問題になっている国境地帯のPutumayo(プトゥマージョ、掲載地図では右手上に下線表示)周辺からは、単に地図上を直線で測っても100キロメートル離れています。その上、ラーゴ・アグリオから首都のQuito(キート)までは、その間にアンデス東山脈に聳えるカヤンベ山(海抜5790m)があり、地図上の直線距離でも180kmあります。そして、キートから最も近い海岸地帯北部のバナナ産地(掲載地図の北に斜線で示した地域)まででも、さらにアンデス西山脈に聳える、海抜4794mのピチンチャ山を超えて、地図上の直線距離で100km、 車ではハイ・ウェイを時速100kmで走っても3時間は掛かります。日本向けだけでなく、総ての輸出用バナナの大部分が栽培されている海岸地帯中部と南部(地図上中央部の斜線で示した地域)とアマゾンの間にはコトパクシ(5896m)、サンガイ(5230m)、チンボラーソ山(6310m)などの雪山と高峰が屏風のように横たわっていますので、どう間違っても除草剤はバナナ産地には届きません。新聞でも風向きによっては、国境から20キロほど離れた市街地でも、云々、と書かれていますよね。心配ないです。」と、説明しています。センセーショナルなタイトルと説明不足の記事が予期しない所に迷惑を及ぼすのは良くあることですが。予期していた?それはないですよね。

そんな訳で、今回は海岸地帯、地図上ではMilagro(ミラグロ)の近くにあるEnano Banana農園“Agrosavanna”で去年撮ったペルームネアカマキバドリをエクァドールの地図と一緒に載せます。この鳥も“La Regin Tumbesiana (トゥンベス地方)”を生息域の中心として勢力を伸ばし、今ではアンデスの高地でも目撃例が報告されているようです。なお、中部・南部のバナナ生産地は概ね地理上のトゥンベス地方に位置しますので、バナナ園で撮った野鳥の中には同地区の固有種がかなり含まれています。