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No.167 Fawn-breasted Brilliant

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、"Fawn-breasted Brilliant (和名:チャムネテリハチドリ 学名:Heliodoxa rubinoides)"です。

Fawn-breasted Brilliant (和名:チャムネテリハチドリ 学名:Heliodoxa rubinoides)

Tandayapa Bird Lodgeで、光は足りなかったのですが、ちょうどこちらを向いていたので、何枚か撮ったものの内の一枚です。

今回は、Tandayapa Valleyを含むMindo-Nambillo地区ではかなり広い地域で普通に目にするチャムネテリハチドリを取り上げます。このハチドリについて書く前に、念のためもう一度ガイド・ブック“The Birds of Ecuador”を読み返してみたところ、私が普通に見掛けるハチドリだと思っていたのは、Mindo-Nambillo地区のTandayapa ValleyやMindoを中心とした地域ではそうであっても、エクァドールの他の地方ではあまり目にしない種だと書かれていました。私の鳥見は、La Costa(海岸地帯)を除くとほとんどがMindo-Nambillo地区だったので、ついこの地域で頻繁に見るハチドリは他の地域でも同じ様に見ることが出来るものだと、錯覚していたようです。このチャムネテリハチドリとTandayapa Bird Lodge のフィーダーにやって来る、サイズも一見した外見も似ていて、混同するのがBuff-tailed Coronet(フチオハチドリ)で、このLodgeのホームページでも前記二種の見分け方が丁寧に説明されています。私はどちらも普通種なのかと誤解していましたが、二種とも限定された地域でしか見ることのないハチドリだと書かれています。エクァドールのアンデスで見られるハチドリに限定すると、逆に広範囲に棲息する、Sparkling Violetear(アオミミハチドリ)やShining Sunbeam(ニジハチドリ)の様なハチドリの方がどちらかというと少数派のようです。考えてみればエクァドールのアンデス高原は、気象に関しては、「首都のキートには4つの季節が一日の内にある。一年ではないですよ。」とよく言われるように時刻、場所によってまさに刻々と変化しますし、地形的には、長い人間の開拓の歴史の結果、本来の林や森は、西山麓や東山麓の急峻な中腹を除いて散在している、といった表現が当てはまるような状態ですので、大きな山塊一つ、峡谷一つ超えて別の森に入ると、自然環境、特に高度(気圧)、温度などが異なる場合も多いので、当然植相がかなり異なります。したがって、それぞれの環境に適応して進化したり、生き残ったハチドリが地域地域にいても不思議ではないのでしょう。その反面、La Costa(海岸地帯)の自然環境は中米、パナマ地峡、コロンビアから続く熱帯雨林が、Esmeraldas州まで来ており、乾燥地帯のRegion Tumbesiana(トゥンベス地方)が始まるManabi州を境として、北部と中南部の二つの特徴ある地域に区別されていますので、動植物も大まかに二つに分類する事が出来ます。ハチドリの中には、中米で見られるものがエクァドールの海岸地帯北部にも棲息しています。ただ、Rufous-tailed Hummingbird(ハイバラエメラルドハチドリ)のように海岸地帯の熱帯雨林地帯はもちろん、トゥンベス地方の乾燥地帯、そして化学物質の使用が極端に制限されたバナナ園からアンデス高原にまで生息域を広げているものは多分例外的な存在で、一般的にはハチドリのほとんどは限られた花の蜜に依存して生きるように特化していますので、食虫の野鳥、例えばタイランチョウの中でも有名なVermillion Flycatcher(ベニタイランチョウ)のように、ガラパゴスの雨林帯スカレシァの森から、トゥンベス地方にある牧場、バナナ園、そして2600メートル程のアンデス高原にまで棲息するものは他にはいないようです。因みにガラパゴスにハチドリは棲息していません。

Fawn-breasted Brilliant (和名:チャムネテリハチドリ 学名:Heliodoxa rubinoides)

偶々、まるで食虫の野鳥のように屈んで前を窺う姿勢を取ったので、シャッターを押したところ、胸の赤いパッチのような羽根の塊が浮き上がっているのが撮れました。

今回のチャムネテリハチドリですが、この鳥もハチドリ一般の例に漏れず、ほとんど真正面から撮影しないと咽喉の部分の少し紫がかった赤いパッチは捉えることができず、茶色がかったグレイにしか映りません。分類を容易にするために、他の野鳥を撮影するように、横からの写真を撮ると体形の特徴は捉えられますが、写真としてのアッピール度は落ちるように個人的には思いましたので、今回の休暇ではこのハチドリに限らずほとんどのハチドリを正面から撮ろうとしました。結果はまあ、まあ、でしかありませんでしたが、これは私の写真の技量の問題のようです。