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No.164 Galapagos Red-billed Tropicbird

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、"Galapagos Red-billed Tropicbird(ガラパゴスアカハシネッタイチョウ: 学名 Phaethon Aethereus limitatus)"です。

Galapagos Red-billed Tropicbird(ガラパゴスアカハシネッタイチョウ: 学名 Phaethon Aethereus limitatus)

Plaza del Sur島南側の断崖の巣から飛び出して、飛翔を始めたGalapagos Red-billed Tropicbird。

前回のバンの後は、同じ水鳥のバナナ園内用水路で撮影したナンベイレンカクの掲載を予定して、6年振りでやっと都合をつけた休暇を楽しもうとエクァドールに出掛けたのですが、アンデス西山麓と東山麓を駆け足で廻った上に、なお欲張ってガラパゴスにまで足を伸ばしたので、睡眠不足と疲労で体調をちょいちょい崩して一週分掲載を延ばしてしまい、このコラムを見ていただいている方々には失礼いたしました。一週遅れで、予定通りレンカクで行こうかとも思ったのですが、ガラパゴスで見聞きした情報の中に、過去にガラパゴスへいらした方々にはお伝えしたい事がありますので、今回と次回は急遽予定を変更してガラパゴスの野鳥にします。

もうお聞きの方も当然いらっしゃると思いますが、我々バナナ屋はともかく、ガラパゴスを主題にした数々の特別報道番組撮影担当の皆さんが、長年にわたり中長期滞在されたHotel Galapagosが営業を停止した、というニュースです。私も何年か振りにHotel Galapagosを訪れ、同オーナーのJackこと、Mr. Jack Nelsonと歓談することを楽しみにして、彼にメールを入れたのですが、暫くホテルは休業するので、彼が経営する会社“Scuba Iguana”が私の旅行滞在の面倒を見るから、そちらへ連絡を取ってくれと、いう返事が来ました。結果から言うと、Scuba Iguanaの手配はきちっとしたもので、私と妻が観て回りたかったものは期待以上に見ることが出来ました。しかし、それでも気懸かり、心残りのことが数々あったので、その日のPlaza del Sur島の観光スケジュールを早めに切り上げ、Jackに会いに行きました。彼は、彼の愛する、ホテル時代はロビーとして使っていた本館のいつものテーブルに向かってパソコンを叩いていました。二人の話は、時空を行ったり来たりして、今と昔のガラパゴスのことごとを懐かしんだり、嘆いたりして続きました。また、近年のアマゾン源流部にあたるアンデス東山麓で、整備されて発展し続ける道路網に沿って、秩序ある状態とは言い難い形で急激に広がっている粗放牧畜業、それが結果としてもたらす自然破壊、そしてエクァドールをはるかに上回る規模で続いている同河川(アマゾン川)中流域での森林伐採と放牧の進行、それがもたらす上位等級牛肉では当然ないけれども、飼料の関係で狂牛病の恐れだけは全くない、安価な牛肉の家庭用消費と業務用途向け供給過剰問題が一見恒常的になりそうな心配、それがラテンアメリカという地域社会を超えて、思いも掛けないところに影響をもたらすのではないかなどという事なども話題にしながら、年寄り同志(?)に特有な繰言で時間を潰しました。話が途切れたとき、Jackがホテルはグァヤキールの金持ちに売却してしまったこと、そこにあったバンガロウ風の建物は見ての通り、全部取り壊してしまったこと、2年か3年したらその新しいオーナーは、出来るだけここの自然環境を生かして、一泊500ドル位の宿泊料金の部屋を20棟程建てる予定であること、等を語ってくれました。

Galapagos Red-billed Tropicbird(ガラパゴスアカハシネッタイチョウ: 学名 Phaethon Aethereus limitatus)

断崖に沿って東から西、西から東と私達の頭上を何回も行き来していたガラパゴスアカハシネッタイチョウ。

旧交を温めては来たものの、話題の深刻さに話しをして来た本人が落ち込んでしまったような次第です。

気分転換に、数時間前、Plaza del Sur島でシャッターを切り続けていた、私だけでなく古今東西、海の民に愛され、ギリシャ神話にも語られたRed-billed Tropicbird(第10回掲載)の美しい飛翔を思い出して、せっかく手にしたガラパゴスでの休暇を楽しもうと努力しました。

今回、今までと同じような観光コースを辿ってみて感じたのですが、ネッタイチョウは増えているような印象を持ちました。この鳥は断崖の岩壁の隙間など、非常に限定された場所に営巣します。