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No.163 Common Gallinule

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、"Common Gallinule (和名:バン 学名:Gallinula chlorophus)"です。

Common Gallinule (和名:バン 学名:Gallinula chlorophus)

Mocacheの女性市長さんSra. Andradeのサニート農園“San Marcos”内の、イグアナが巣を作っている貯水池にいたCommon Gallinule(バン)。

La Costa(海岸地帯)の湖沼地帯に多く棲息するこの野鳥は、前回のアメリカムラサキバン程ではないのですが、とても警戒心の強い水鳥で、バナナ園内の貯水池などで目にする割には、昼間はなかなか写真を撮らせてくれません。農園の労働者が野鳥を虐めない農園、例えばMocache市の女性市長Sra. Andrade(アンドラーデさん)のサニート農園“San Marcos(サン・マルコス)”の貯水池や、外部からの人間がほとんど入って来ないEnano Banana農園“Montana(モンターニャ)”内にある池等ではこの鳥、バンをいつでも見ることは出来ます。それでも、この水鳥に40メートル以内に近づいてシャッターを切ることは至難の業です。直ぐに水に潜るか、岸辺の葦に似た水草の中に身を潜めてしまいます。

私もつい数年前までは、なんでこの鳥がそんなに警戒心が強いのかは分かりませんでした。あるときエクァドールに長期滞在している日本人の友人の一人が、「鴨に似たGallareta azulっていうのがとても旨いんですよ。知っていましたか。」と訊いてきたのですが、「ごめん。私にとって鳥は写真の対象ではあっても、美食追求の対象ではないもんで、どうしても、鳥しか無いときは別として、普段は鳥肉を食べないため40数年この国に来ていてもそのGallareta azulも食べたことはないんですよ。」としか答えようがありませんでした。その時は、Gellareta azulというのは、前回取り上げたPurple gallinuleのことだと思っていました。

ところが、その数ヶ月後、エクァドール人の同僚達と産地廻りをしていたとき、朝からの農園巡りでお互いが空腹を感じていたからでしょう、話題は自然に昼を何にするかから始まって、食べ物全般の話になりました。最初は私の好きな魚介類で、この国の高速道路網が非常に整備されたので、今では何処へ行っても海老や魚の新鮮なものが食べられるから、海老にしようと言われたのですが、すべての食堂(レストランといったレベルのものも含めて)が前日の残りは処分してその日仕入れた新しい物だけを出す訳ではないので、食あたりでもしようものなら、産地廻りに支障をきたすのでこれはボツ。次に、最近養殖が盛んになったテラピアのムニエルが美味しいので、それにしようということになりました。しかし食べ物の話題は尽きず、次に、牛から豚、山羊、兎、クイ(げっ歯類の仲間)という、亡くなった冒険家、釣り師、作家であった開口健さんがその著書“オーパ”の中で珍味とした動物、ただし、これは飼われているものよりも野生のものの方が断然良いとのことや、それより脂が乗っていて美味しいのは間違いなくGuanta、あるいはUanta(これもげっ歯類の仲間ですが)と呼ばれる動物、しかしこれに似たアグーチ(これもげっ歯類)は不味い、など終にはゲテモノ談義にまで発展して行きました。

Common Gallinule (和名:バン 学名:Gallinula chlorophus)

エナーノ・バナナ農園“La Montana”の中にある、金魚藻が表面を覆いつくした池の上を夕暮れに歩き回っていたCommon Gallinule。

そして、私が鳥肉を食べないことを知っていても、話は当然、鳥に移りました。La Costaの中心地Los Rios州では、カモ類がよく食べられ、その中でもGallareta azulが一番旨いと、車中一同の意見が一致しました。“Esta ave, Gallareta azul es esa que tiene el color violeta o en ingles purple ?(この水鳥、ガジャレータアスールというのは紫色、英語でいうpurple、の奴かい。)”と訊いたところ、アメリカムラサキバンではなく、もっと良く見られる水鳥だと言うのです。ただし、同じGallaretaといっても Gallareta rojo(ガジャレータ・ロッホ)、あの赤い奴は不味くて食えないと言います。その日の午後の産地周りをしていてはっきりしたのは、彼らがGallareta azulというのはこのCommon Gallinule(バン)のことで、Gallareta rojoというのは、Wattled Jacana(アメリカレンカク)のことでした。正確なスペイン語ではレンカクはJacana(ハカナ)で、Gallareta(英語のGallinule)とは区別しているのですが、エクァドールの学者ではない人達にとっては、みんな一緒くたになって、Gallaretaと呼ばれています。