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No.162 Purple Gallinule

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、"Purple Gallinule (和名:アメリカムラサキバン 学名:Porphyrula martinica)"です。

Purple Gallinule (和名:アメリカムラサキバン 学名:Porphyrula martinica)

エナーノ・バナナ農園”Konita”でバナナの葉の上を歩いていたPurple Gallinule(アメリカムラサキバン)。バナナの葉の上にいたこの鳥を見るのは初めてでした。

今回取り上げたPurple Gallinule(アメリカムラサキバン)は、La Costa(海岸地帯)の湖沼、河岸、農業用水などの水辺やその周辺にはかなり普通に住んでいるはずなのですが、Wattled Jacana(ナンベイレンカク)やCommon Gallinule(バン)のようには頻繁に目にしません。何せ鮮やかな羽色をしているので、視界に入れば見逃すことはないのですが。この水鳥は、バンとは違って、泳いだり水に潜ったりはあまりしないようです。確かに、この鳥を見るときは大概湿地帯の水草の上を歩いているか、沼や池の辺で周りを警戒しながら、まさに用心深く歩いる姿です。バナナ園でも、有機バナナ農園、サニート農園、そして普通のバナナ園の場合は、強い農薬の使用を極力抑えて営農地が広く、人間があまり立ち寄らない場所にある農業用水路や用水池の岸辺で、ちょいちょい見ますが、何せ極端に人間を警戒しますので、人影を見るとさっと葦のような背の高い水辺の叢の中へ身を隠し、一度姿を隠してしまうと、その辺に未だいるだろうと見当を付けて探し回ってもまず見つけることは出来ません。まさに忍者のような鳥です。そんな訳で、この鳥をまともに撮った写真はほとんどありません。

左に掲載した写真は、Frushi Groupのバナナ園“Hacienda Konita(コニータ農園)”を視察に行ったとき、当然到着しているべき包装資材が未だ来ておらず、20分程待ってくれ、と言われたので、「これは、30分は掛かるだろうから苛々しないで写真でも撮るか。」と、気持ちを切り替え、Packing House(包装加工場)の周りのバナナをゆっくり見ているときに撮れたものです。バナナ園の中を流れる清流の岸辺にミドリヤマセミがいるのではないかと思って、丹念に見てみたのですが、その姿を見ることが出来ず、がっかりして視線を上げると、30メートル程離れたバナナの葉の上を一羽のアメリカムラサキバンが歩いているのを見つけました。それまで見て来たこの鳥はいつも水辺を歩いているものばかりでしたので、大変面喰ったのですが、こんなシャッター・チャンスは滅多にないと思い、夢中で撮り続けました。後でガイド・ブック“The Birds of Ecuador”を良く読んで見たところ、この鳥は泳ぐことはあまりしないけれども、背の高くない木に登ることはあるそうです。

Purple Gallinule (和名:アメリカムラサキバン 学名:Porphyrula martinica)

水草の茂る湿地の中を歩き回っていたアメリカムラサキバン。こんな姿の方を普通は目にします。

右に載せた写真は、グァヤキール市の南東に位置する自然保護区Churuteへ鳥見に出かけ、手違いからガイドさん無しで山に入り、ホエザルの咆哮だけを聞いて空しく山を降りて来たときに撮ったものです。牧場のセイボの木にキゴシツリスドリの巣が下がっているのを見つけ、車を止めて写真を撮り始めると、足元の湿原でナンベイレンカクのけたたましい鳴声が上がりました。何事かとそちらを見ると、巣で卵を抱えていたレンカクが、巣に近寄って来たアメリカムラサキバンを追い払っているところでした。体の大きさが倍近くもある侵入者を必死で追い払うレンカクの姿は、心に強く訴えるものがありました。追い払われたアメリカムラサキバンが渋々と立ち去って行くところです。