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No.157 Rufous-tailed Hummingbird

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、"Rufous-tailed Hummingbird (和名:ハイバラエメラルドハチドリ 学名:Amazilia tzacatl))"です。

Rufous-tailed Hummingbird (和名:ハイバラエメラルドハチドリ 学名:Amazilia tzacatl)

海抜1750メートルの所に在るTandayapa Bird Lodgeのヴェランダから、フィーダーの傍らで羽を休めていたハイバラエメラルドハチドリ。嘴の黒い部分はほんの先端だけです。

今回のハイバラエメラルドハチドリは、メキシコからコスタ・リカ等の中米諸国、コロンビアを経てエクァドールの南西部、ペルーではエクァドールとの隣接地帯までという途轍もなく広い地域に棲息しているハチドリです。海抜1500メートル位までの所で普通に見られるのですが、2200メートルのBella Vistaでも、あるいは2500メートルのキート市郊外、そして時には、もっと高い同市の市街地でも目撃例があるそうです。また、La Costa(海岸地帯)の乾燥した地域では、Amacilla Hummingbird(チャムネエメラルドハチドリ)と共存していますが、さらに乾燥した地方ではチャムネばかりになり、ハイバラは見ないとガイド・ブックには説明されています。確かに、Chongon湖の公園辺りの乾燥地帯では、このチャムネを良く見掛けますし写真に撮っていますが、ハイバラの写真を撮ったことはありません。雲霧林を中腹に抱え、そこから流れ下る谷川には水の絶えることのない、アンデス西山麓に近いバナナ園、オリート農園ではハイバラしかいないようですが、南のEl Oro州のかなり乾燥した地域の農園では、両種を見ることが出来ます。

ここで、ど素人の疑問表明をまた一つ。それは、このRufous-tailed「赤みがかった尾をした・・」という名前の意味からすると、ちょと視点がずれるのですが,このハチドリの長い嘴に見られる黒い部分の長さなのです。

La Costa(海岸地帯)のバナナ園(具体的にはサニート農園とオリート農園が大部分ですが)で、バナナの花から花へ飛び廻っているこのハチドリは、といっても実際には動きが細かく、とてもすばしっこいので肉眼でその姿形の確認をフィールドですることは不可能で、写真に撮って初めて出来るのですが、なんとか撮れた少ない写真のどれを見ても、嘴の黒い部分がTandayapaやMindoで撮った鳥たちのものよりも長いのに気が付きました。バナナ園で、もっと沢山このハイバラエメラルドハチドリの写真が撮れれていれば良いのですが、バナナの花というのは、我々が食べるFinger(フィンガー)と呼ばれる一本のバナナの先端にくっ付いたとても小さな花なので、そこに溜まる花蜜は正にほんの微量なものでしかありません。そのため、このハチドリは忙しなく、細かく飛び廻り続ける上に、他の体の大きな野鳥や人間を警戒して滅多に止まることはありません。その点は、TandayapaやMindoのバーダー達の野鳥観察を目的に設けられた、ネクターや砂糖水をたっぷり入れたフィーダーに来て、お腹を一杯にして傍の枝に止まっているハチドリのように、至近距離で写真を撮らせてはくれません。そんな訳で、バナナ園やその周辺で撮ったこのハチドリの写真は20葉もありません。しかし、そのどれに映っているものも、嘴の黒い部分は長いのです。

Rufous-tailed Hummingbird (和名:ハイバラエメラルドハチドリ 学名:Amazilia tzacatl)

海抜300メートルには届かないSr. F. Hoyos(オジョスさん)のサニ−ト農園内の加工包装場脇に植えてあるオレンジの樹に作られた巣にいたハイバラエメラルドハチドリ。このハチドリは他のサニート農園でも、比較的人間が出入りする場所に生えている、棘のあるオレンジの樹によく巣を作ります。

その違いに気が付いたのは、このハイバラは珍しいハチドリではないので、バナナ園以外で鳥見をしている時も、帰国して写真をコンピューターで整理しているときも、あまり特別な関心は払っていなかったのですが、エクァドールへ行かれた何人かの方々のHome Page を見せていただいていたら、どのサイトでもこのハチドリがとても美しく撮られているのに驚かされました。その後、Mindo-Nambillo地区へ入った時は、意識してこのハチドリにレンズを向けました。Tandayapa Bird Lodgeで撮ったもの、Mindoで撮ったものをじっくりと見ていたら、どうも何かが変なのです。そこで、この3月にSr. Freddy Hoyos(オージョスさん)のサニート・バナナ農園のPacking house(加工包装場)脇に植えてある、オレンジの枝に巣作りをしていたハイバラエメラルドハチドリの写真をコンピューターの画面に引っ張り出して、じっくりと見比べてみました。その時初めて、嘴の黒い部分の長さが違うのに気が付いたのです。La Costaの乾燥地に棲むチャムネエメラルドハチドリの黒い部分も余り長くはなく、La Costaのハイバラとアンデス西山麓のハイバラのものとの中間のような感じです。また、最近コスタ・リカ在住のバーダーの方のホーム・ペイジに、ハイバラエメラルドハチドリの動画がUpされています。それは実に素晴らしいもので、臨場感も味わえ、かってTandayapa Bird Lodgeで出会ったアメリカ人のご夫妻が、動き自体が鑑賞の対象となるハチドリはヴィデオ・ムーヴィーで撮る方が好きだと言っていたのを、思い出しました。その動画を何回も見せて頂いたのですが、コスタ・リカのハイバラエメラルドハチドリの嘴の黒い部分もTandayapaで撮った同種のハチドリのものよりも長く、エクァドール海岸地帯のものと似たような長さに見えました。興味深くて、その反面、私には分かりにくい相異点なので書きました。素人は気楽にものが書けたり、言えたりするから良いですね。