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No.156 Rainbow-bearded Thornbill

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、" Rainbow-bearded Thornbill(ニジイロコバシハチドリ:Chalcostigma herrani)"です。

Rainbow-bearded Thornbill(ニジイロコバシハチドリ:Chalcostigma herrani)

梢で午前中の陽を浴びながら、羽を交互に伸ばしたり、毛繕いをしたりしてリラックスしていたニジイロコバシハチドリの雌。

またハチドリに戻って来ました。このニジイロコバシハチドリから続けて3回ハチドリを載せるつもりです。海抜3400メートルのYanacochaで撮ったニジイロコバシハチドリ、海抜0から200メートル位までの所にあるバナナ園にも、1400メートルのMindoにも、2200メートルのBella VistaにもいるRufous-tailed Hummingbird (ハイバラエメラルドハチドリ)、 言い換えれば、エクァドールで人が住んでいる所だったら何処でも、と言っても良いぐらい広い範囲で目にするハチドリ、そして1100メートルから2000メートルを超える渓谷という、かなり限定された環境でしかその姿を見られないWhite-tailed Hilstar(ルリムネハチドリ)の3種を取り上げます。ハイバラエメラルドハチドリは第25回で、ルリムネハチドリは第26回に取り上げていますが、前回の掲載のものとは違った写真が撮れたし、今回の方がそれぞれの特徴がより分かり易いと思ったのでまた載せることにしました。ハチドリは今まで扱っていない種の写真もまだまだあるのですが。

ニジイロコバシハチドリは、ガイドブックによると、コロンビア南の一部地域とエクァドールを中心として、ペルーの北部にかけての海抜2800メートルから3700メートルの高地の断崖沿いに生えているブッシュ、林に棲息しているなど、特定の地でしか目にすることの無い種と説明されています。このハチドリの写真が撮れたのは今年の4月、二度目にYanacochaを訪れた時でした。第124回のヤリハシハチドリのところで書きましたが、初めてアンデス西山脈の海抜3400から3500メートルの高地にあるYanacochaを2月初旬に訪れたときは、強行スケジュールをこなした後だったため、疲れ切った体調で、そのうえ高山特有の低温と霧雨のような濃霧の中で鳥見をしたせいか、夕刻という野鳥を見るのには理想的な時間帯であったのに、限られた種のハチドリしか撮影することが出来ませんでした。

Rainbow-bearded Thornbill(ニジイロコバシハチドリ:Chalcostigma herrani)

一生懸命巣作りの材料を運んでいたニジイロコバシハチドリの雄。角度が違うともっと色鮮やかに羽毛が輝いているのが撮れるのですが。

この最初の辛い経験に懲りていたので、二回目はゆったりと、時間的にも余裕を持ち、60代半ばの男のフィジカル・コンディションを整えて再度Yanacochaに挑戦しようと考えていたのですが、出張スケジュールの都合上、急遽予定外の行動に出ざるを得ませんでした。前日の土曜日に、やはり出張で来ていた息子とガイドさんのDanny、そして4輪駆動車のドライバーと4人でMindoのいつものレストランで虹鱒の大きなフライを食べたり、窓辺に吊るされたフィーダーにやって来るシロエリハチドリの写真を撮りながら、翌日のグァヤキールへ戻る午後2時のフライトの話をしていたとき、Danny と息子が“Que haremos manana por la manana antes de ir al aeropuerto ?(明日の朝は空港へ行くまでどうしますか。)”と、話し出したのです。そう言えば、明日の午前中を外したら、Yanacocha行きの時間が取れないことに気が付いたので、Danny とドライバーに都合を訊くと二人とも、“No tengo ningun compromiso(何の約束もありません)”と答えてくれました。翌朝は晴天で、活火山ピチンチャの火口から上がる噴煙を正面に見ながらYanacochaの山道を歩き出しました。今回は二晩、海抜2850メートルのキートのホテルで過ごしていたので、高度順応はしっかり出来ており、前回とは違って、かなり調子良く歩くことが出来たのですが、なかなか第1のフィーダーに着かないのです。帰り道で距離を測ってみたら、第4フィーダーまで入り口から2キロ弱と聞いていましたが、実際には3キロ近くあるようでした。

入り口から2キロ程の所、崖際の林で、ニジイロコバシハチドリの雄が巣作りの材料を運んでいるを目にし、シャッターを3回ほど切ることが出来ました。帰り道ではこのハチドリの雌がのんびりと日向ぼっこをしていたので、落ち着いて10枚ほど写真が撮れました。YanacochaではBuff-winged Starfrontlet(モンツキインカハチドリ), Great Saphirewing(ルリバネハチドリ), Sword-billed Hummingbird(ヤリハシハチドリ)をはじめとする、見る者の目を引く個性的なハチドリやハナサシミツドリなどの野鳥が次々に現れたので、このニジイロコバシハチドリの写真を撮った時は、恥ずかしい話ですが、このハチドリがこれ程フォトジェニックだとは思いもせず、日本に帰って来て自宅のコンピューターで画像を拡大して、その可愛らしさに気が付いたような次第です。