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No.154 Pacific Pygmy-Owl

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、" Pacific Pygmy-Owl (ペルースズメフクロウ:Glaucidiumperuanum)"です。

Pacific Pygmy-Owl (ペルースズメフクロウ:Glaucidiumperuanum)

Hacienda San Fermin(サン・フェルミン農園)のWilliams種バナナの林の中から我々農園見学者達を、まるで「うるさいなあ。邪魔なんだよ。」と言った目つきで見ていたPacific Pygmy-Owl.

つい最近まで私はこのスズメフクロウの和名が分かりませんでした。その理由は、この鳥の英語名“Pacific Pygmy-Owl”から和名を探していたからです。私がいつも見る野鳥図鑑“The Birds of Ecuador”にしても、自然保護区Cerro Blancoで買った野鳥イラスト説明書にも、Pacific Pygmy-Owlとあるのです。前回のタニシトビの原稿を書いていた時も未だ分かりませんでした。そんな時のいつもの常で、オン・ライン野鳥図鑑をまたまた参照させて貰いました。そこには、Pacific Pygmy-Owlという野鳥名が見当たりませんでした。Peruvian Pygmy-Owlというのは載っていたのですが。見落としたのかと思って、何回もフクロウとミミズクの所を丁寧に見返しましたが見つかりませんでした。途方に暮れていると、何の気なしに学名に目が行きました。すると、“Peruvian Pygmy-Owl:Glaucidium peruanum”と書いてあるのです。つまり、学名はPacificPygmy-OwlもPeruvian Pygmy-Owlも同じだったのです。その詳しい説明が知りたくてThe Birds of EcuadorのStatus, Distribution, and Taxonomyを読み、納得しました。英語名に関しては学者さん達の間で意見が分かれているようです。この点をきちっと理解したい方は上記の本をお読みください。ただ、「Peruvianと言ってもEcuadorにもChileにもいるじゃないか。」という点については、Peruvian Meadowlark:(第46回掲載:ペルームネアカマキバドリ)もエクァドールのペルーとの国境に近いEl Oro州だけでなく、La Costa(海岸地帯)の中部、Guayas州、Los Rios州にも棲息しているので、「この鳥の場合はどう説明するのかなあ」、というのが私、素人のボヤキです。

人間以外の生き物には国とか国境などというものは存在しないし、動物だけでなく、ある生き方をしている人達、例えば古い時代の海洋民族、また現代でも遊牧民や漁労民と呼ばれる人々にとっては国とか国境というものに対する感覚、理解、意味は先進諸国で暮らす現代人のものとはかなり異なるもののようです。国、国家というものに対する見方、考え方はここ数十年大きく変わって来ているようですが、最近は政治上、あるいは、文化・習慣の大きな差異を原因として、民族主義やナショナリズムに再び火が点けられたようにも見えますね。

Pacific Pygmy-Owl (ペルースズメフクロウ:Glaucidiumperuanum)

このスズメフクロウは昼も餌探しを活発にします。人間がやって来ると、当然人間が気になるので、我々の方を見てばかりいるのですが、この時は多分、獲物の気配でも感じていたのでしょう、そちらをよく見ていたので、横顔が撮れました。

本題のPacific Pygmy Owlですが、この鳥は主として、エクァドールからペルーの太平洋沿岸沿いの“Region Tumbesiana(トゥンベス地帯)”と呼ばれる広大な乾燥地帯に棲息しており、エクァドールでは太平洋沿岸地帯のBosque Seco(乾燥森林)を中心にして、その周辺で棲息域を広げているようです。レデスマさんの有機栽培バナナ農園、エナーノ・バナナ農園の“Hacienda San Fermin”や“Hacienda Los Alamos”、アンデス西山麓に接しているBucay地方のオリート農園などでよく目にします。

Region Tumbesianaの一つの特徴は乾燥した風土で、エクァドールとペルー側ではその乾燥度がかなり異なると言われていますが、ペルー側は良く知りません。フジモリ元大統領がエクァドールとの国境紛争に終止符を打つまでは、国境を接するバナナ主産地のEl Oro州に入るとパスポート所持のチェックなどがとても厳しく、なかなかペルー側に入れなかったのも一つの理由です。トゥンベス地帯は総じて南へ行くほど乾燥度が増すと説明されています。これは、フンボルト海流ともペルー海流とも呼ばれる南極からの強くて大きな寒流の影響です。今まで何度か書いて来ました自然保護区“El Cerro Blanco”もRegion Tumbesianaに含まれます。