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No.153 Snail Kite

Photo & Text:Motoaki Itoh

今回は、" Snail Kite ( 和名:タニシトビ 学名: Rostrhamus sociabilis)"です。

Snail Kite ( 和名:タニシトビ 学名: Rostrhamus sociabilis)

Hacienda Clementina(クレンティナ農園)用水路脇のバナナの切り株から餌を探していたSnail Kiteの雄。同農園はエナーノ・バナナを作っています。

今回から3回は、バナナ園内で撮影した野鳥の中で過去に一度扱ったのですが、今ひとつ納得できなかった写真しか使わざるを得なかったため、心残りだったものに代わる写真が今年の出張中に撮れたので、それを掲載します。ホーム・ペイジのタイトルにはより相応しいものであると思っています。Snail Kite (タニシトビ)、Pacific Pygmy-Owl (和名不明)、Striated Heron(ミサゴイ)です。

Snail Kiteの餌となる南米のタニシは、日本のものよりもかなり大きく、また、種も違うのではないかと思います。いずれにせよ、生きている巻貝の身を貝殻を割ることもなく、嘴で引っ張り出して食べるのですから、嘴はその様な働きが出来るように進化しています。この鳥の掲載を決めたいま、猫のための乾燥餌を食べに来る我が家の松ノ木で生まれ育ったハシボソガラスの兄弟に好奇心を掻きたてられたのでしょう、一昨日初めてやって来たトビの若鳥の写真がほんの9メートル程の近距離から撮れたので、その嘴とSnail Kiteの嘴を較べました。トビの嘴をしげしげと見たのは初めてでしたが、雑食のトビの嘴は鷹のそれに近く、当たり前ですよね、Snail Kite の細く極端に湾曲したものとはまったく異なっていました。


Snail Kite ( 和名:タニシトビ 学名: Rostrhamus sociabilis)

Frushi Groupのエナーノ・バナナ農園“La Nueva Union”の用水路脇のバナナに止まっていたSnail Kiteの雌。人間が来たので、Wattled Jacana(ナンベイレンカク) は慌てて飛び立ち、Purple Gallinule(アメリカムラサキバン)は叢に身を隠しました。

Snail Kiteはフロリダ、キューバ、メキシコからアルゼンチン北部にまで棲息していますが、その非常に広い地域の中でも、この鳥が餌とする巻貝が棲息する湿地帯以外では当然見られません。また、このSanil Kiteに良く似た、同じように巻貝を食べるもう一種のトビ“Slender-billed Kite(ハシボソトビ)”も中南米には棲息しますが、エクァドールでは、アマゾン地区のごく限られた地域にしか見られず、太平洋沿岸部には棲息していません。その意味では、中南米何処へ行っても目にする、多分その良い例がTropical Kingbird(オリーヴタイランチョウ)やBlue-gray Tanager(ソライロフウキンチョウ)だと思いますが、人間社会に適応した野鳥達とは違います。エクァドールではその棲息域はグァヤス川の流域とその周辺、そしてアマゾンの一部の湿地帯に限られているようです。群れ集う習性(これが学名Rostrhamus sociabilisの由来)を持つこのトビは、前回も書きましたように、時には数百羽もを一度にひとつの場所で見ることが出来たのですが、環境の悪化と共に、今では、20から30羽も群れていると、かなり大きな群れに出会ったような気になります。このトビもエクァドールのRed data bookに“Vulnerable”として登録されてしまいました。今年の1月に雨季の到来が異常に遅れたため、例年だと巨大な沼と化す、エナーノ・バナナ農園Hacienda Clementina(クレメンティーナ農園)の南にある湿地帯が干上がって、残った小さな沼や川、水路の周り、電線の上に50羽から70羽程のSnail Kiteが群れていました。こんなに多くのSnail Kiteが群れているのを見るのは本当に久し振りでした。希望的観測をすると、水田耕作、バナナ栽培などの営農で農業関係者が化学物質の使用に注意深くなっているのが、水中生物を再び増やし、その結果、これらを捕食する野鳥が増えているではないかと考え、そして、そうであって欲しいと願っています。特別栽培の一つであるサニート・バナナ農園、あるいは通常のバナナ栽培農園であっても、化学物質の使用を抑えた所では、用水路の脇のバナナの葉や作業用の橋、杭などに止まって、水中の巻貝や海老などを見つけようとしているSnail Kiteを間違いなく目にすることも出来ます。